2016/08/04

平野洋平さんの学会発表の感想(研究への「批判」を「非難」と誤解しなければ、「批判」は宝の山として受け止められます)


本講座の博士後期課程3年目(D3)の平野洋平さん(J-SLA2015口頭発表賞)が今年も学会発表をしました。その感想を寄せていただいたのでここに掲載します(働きながらの大学院生生活はとても忙しいのですが、その中でこの文章を寄せてくれた平野さんには心から感謝します)。






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言語科学会・第18回国際年次大会(JSLS2016)〔東京大学駒場キャンパス〕にて、口頭発表をさせていただきました。今回の発表は、昨年に続きこの学会での2度目の発表でしたが、学会に参加された方が過去最多だったらしく、自身の発表としましても、これまでにないほど多くの方に発表を聞いていただく機会に恵まれました。お陰様で、発表直後のQ&Aの際だけでなく、発表後の空き時間や懇親会、さらには翌日にも、様々な方に声をかけていただきコメントやアドバイスを賜る幸運に恵まれましたことを本当にありがたく思っております。

さて、学会で発表をする機会に恵まれるメリットの1つに、(月並みではありますが)自身の研究についてより多くの方々に知っていただくことや、自身の研究について第三者の目から客観的な鋭いメスを入れて頂くことがあげられると思います。第三者にメスを入れられるということは、つまり自身の研究を何らかの形で「批判」されるということになるかと思います。他者から批判を受けるということは決して心地良いものではありませんが、この「批判」を「非難」と誤解しなければ、他者からの「批判」は宝の山として受け止められるものと思います。

話がそれますが、広島大学大学院教育学研究科(博士課程後期)の学生は、少なくとも2種類のゼミで定期的に自身の研究の進度を報告する必要があります。そこでは、複数の先生方・修士や博士の院生方に向け、自分自身の研究内容・進度を発表し、質疑応答をこなさなければいけません。

このゼミの良いところとして、(1)専門分野の異なる様々な先生方・院生からのコメント(批判)がもらえること、(2)研究が成熟していく様々な段階・過程を目の当たりにできること、があげられるかと思います。これらは自分自身の研究についてのみ当てはまることではありません。他者の研究に対してオーディエンスがどのような切り口でコメントをするのか、また、他者の研究がどのように進展していくのかを目の当たりにできることも、自身の研究を進める上で大いに役立つ部分です。

さて、上記(1)の「コメント(批判)」についてですが、これは控えめに言っても生易しいものではありません(笑)。やはり厳しいコメント(批判)が飛び交うことも少なくありません。しかし、その厳しいコメント(批判)は、ある1つの共通のエッセンスを含んでいるものと理解していますし、自分はそのエッセンスを含めてコメント(批判)をするように心掛けています。

そのエッセンスとは「その人の研究を(が)より良いものにする(なる)には…」というものです。単なる粗探しや上げ足取りのようなものではなく、お互いの研究に足りていないものや研究の弱い部分を率直に指摘し合ったり、有益と思われる情報を提供し合ったり、新たな着眼点を提示し合ったりと、positiveに捉えればお互いの研究が進展するきっかけになるものがそのほとんどです。そういう意味では他者からのコメント(批判)は「易しい」ものではないかもしれませんが、そのほとんどが自身の研究にとって「優しい」ものであると思うのです。少なくとも、決して「非難」ではないはずです。研究者が周囲の言いなりになる必要はもちろんないでしょうが、こうした定期的な発表の場は周囲の声に素直に耳を傾ける良いトレーニングにもなっているものと思います。

そのように考えると他者からのコメント(批判)はいろいろともらえるに越したことはないものとなるわけですが、相手からそれなりの「的を射た」コメント(批判)をもらうためには、自身の研究の内容・進度をオーディエンスに正確に理解してもらうことが大前提です。上述の広島大学のゼミでも、オーディエンスにとって理解しやすい発表・読者に優しい文章・(学会発表をする場合は)オーディエンスに有益な情報の提供など、聞き手・読み手に対する十分な配慮が求められます。これは「言うは易し」で、なかなか実行するのは難しいものですが、それでも普段のゼミから研究内容だけでなく発表の仕方や文章の書き方にまでわたって指摘や助言がいただけるのは本当にありがたいシステムです。

学会発表の感想のつもりが、何やら広大大学院の紹介みたいな文章になってしまいました…(笑)私自身が学内外での発表の際にいただくコメント(批判)を宝の山として受け止めることができるようになった背景には、広島大学でのこうした日常があります。

今回の学会発表に話を戻しますと、自分としましてはそれなりに納得のいく形で発表を終えることができたものと考えております。研究内容にしても発表の仕方にしてもまだまだ改善の余地だらけではありますが、多くのオーディエンスの方から様々な反響をいただけたという意味では、それなりにまとまりのある発表として仕上げることができたのかもしれません(過信は禁物ですが)。今後も発表の機会に恵まれた際には、オーディエンスの方に楽しんでいただけるよう、できる限りの準備を施した上で発表に臨みたいと思います。

院生生活が始まってから、この学会をはじめ複数の学会で口頭発表をさせていただきましたが、その一部をようやく論文として投稿し始めたところです。今回の発表の内容に関しましても、頂戴した様々なご指摘やご助言を反映させながら論文という形でのご報告をしたいと考えております。そして、しっかりとした博士論文を仕上げたいと思います。口頭発表だけでなく、論文もわかりやすいと言っていただけるよう最善を尽くします。

最後に、発表を聞きに来てくださった皆様に改めましてお礼申し上げます。ありがとうございました。発表の機会を与えてくださった学会関係者の皆様にもお礼申し上げます。ありがとうございました。また、自身に研究について、普段からご指導いただいている先生方、様々な指摘・助言をしてくださる院生の皆さんにもお礼申し上げます。ありがとうございました。

【学会名】
 言語科学会(The Japanese Society for Language Sciences)
【大会名】
 第18回国際年次大会(JSLS2016)
【日程】
 2015年6月4-5日(発表は4日の15:45-16:10)
【場所】
 東京大学〔駒場キャンパス〕
【発表題目】
 日本語話者英語学習者による英語結果構文・英語移動構文の容認性判断:検証方法を統一・改善して
(学会HP:http://jslsweb.sakura.ne.jp/wp/?lang=ja
(大会HP:http://jsls.jpn.org/conference/
(大会プログラム:http://jsls.jpn.org/conference/wp-content/uploads/2016/04/JSLS2016Program2016-5-16.pdf)

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