2017/07/26

梅木璃子さん(M2)が第15回国際語用論学会(IPrA, Belfast NI)でポスター発表


 博士課程前期2年(M2)梅木璃子さんが、7月16日~21日に北アイルランド・ベルファストにあるベルファスト・ウォーターフロントで開催された第15回 International Pragmatics Conferenceでポスター発表を行いました。



タイトルは次のとおりです。


July 20, 5-4 - Riko Umeki & Seiji Fukazawa,
The Speech Act Realization of Complaints in L1 and L2 by Japanese Learners of English


 今回の大会テーマはPragmatics in the real worldで、毎日5セッションに分かれて午前8時30分から午後6時45分まで22会場で世界各地から集まった研究者による発表が一日300件以上行われました。梅木さんの発表にも各国からの研究者、大学院生が次々に訪れ、貴重な情報交換ができました。

深澤清治

2017/07/25

小論文コンテストの記事が英字新聞The Japan Newsに掲載されました




英語教育小論文コンテスト「10代・20代が創る未来の英語教育」の最優秀受賞者である岸本陵汰さんへの表彰式および岸本さんを招いてのシンポジウムと対話の集いを7/23(日)に広島大学教育学部K102教室で開催しましたが、そのことを英字新聞The Japan Newsが取材してくださり、本日(2017/07/25)の同紙第3面にその記事が掲載されました。




入試改革を始めとして、日本の英語教育界は変革のさなかですが、そんな中にあえて、現在と未来の英語教育の当事者である10代と20代の若者が、彼ら・彼女らなりの英語教育の未来構想を「大胆に」考えるという試みに注目していただけたのではないかと思います。

ともあれ、遠く東京本社から取材に来てくださいました読売新聞英字新聞部の記者様、およびこの記事出版を可能にしてくださったすべての皆様に厚く御礼を申し上げます。またもちろんのこと、このコンテストに応募してくださった方々、当日会場にお越しいただいた方々にも感謝申し上げます。

当日の様子はまた後日、このブログにて報告できればと思っております。

この小論文コンテストの試みに関しましては、幸い他のさまざまの方々からも評価いただいておりますので、来年度以降も継続し、若い世代の声に耳を傾けつつ、日本の英語教育の改善に資してゆければと思っております。ご意見・ご要望がございましたら、どうぞお知らせ下さい。

本日はご報告と御礼まで。


追記
現時点では、この記事をWeb版でも読むことができます。



University honors ‘bold’ new English education proposals

2017/07/21

英語教育小論文コンテスト「10代・20代が創る未来の英語教育」の最優秀賞は、大阪府の岸本陵汰さんに決定しました


広島大学教育学部英語教育学講座主催 第一回英語教育小論文コンテスト「10代・20代が創る未来の英語教育」 の最優秀賞は、大阪府の岸本陵汰さんに決定しました。


最優秀賞 (岸本陵汰さん・大阪府)

 最近の英語の教科書題材において外国の文化や日本の伝統などが数多く扱われているのに対し、政治的内容はタブーとされてきました。沖縄県出身の筆者は、ふるさとを離れてみて、沖縄の人たちがふだん目にあるいは耳にしていることがほとんどニュースや新聞で扱われないことに愕然とします。ただメディアやうわさに聞いた情報を鵜呑みにするのではなく、沖縄の現実をもっと英語教育の教材に取り入れることができたら、自然で真のグローバルな視点をもたせる理想の英語教育になると提案します。教科書のタブーに挑戦し、極めて重要な問題提起をしている論文であり、最優秀賞に値すると判断しました。




岸本さんは7/23(日)の広島大学英語文化教育学会の公開企画である授賞式にご招待させていただき、そこで賞状と賞品(図書カード)を贈呈させていただきます。

なお、岸本さんは授賞式の後のシンポジウム、対話の集い、ワンコインパーティにも参加してくださるそうです。

どうぞ皆様も7/23(日)の午後は、広島大学教育学部へお越しの上、意義深い語り合いを楽しんでください。

広島大学東広島キャンパスへのアクセス
https://www.hiroshima-u.ac.jp/access/higashihiroshima
教育学部K102教室へのアクセス
https://www.hiroshima-u.ac.jp/access/higashihiroshima/busstop_higashihiroshima/aca_3






以下は、岸本さんの論文全文です。

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広島大学教育学部英語教育学講座主催 
第一回英語教育小論文コンテスト「10代・20代が創る未来の英語教育」
最優秀賞

「私が思うあるべき英語教育 ~離れているから感じること~」



岸本陵汰

  私の出身は沖縄県。その北部に位置する名護市という場所で生まれた。高校までの18年間はそこで暮らし、大学進学を機に大阪の地に来た。私は英語の高校教諭を目指しており、なりたいと思ったきっかけは二つある。一つ目は、私の姉は地元にある米軍基地内でアルバイトをしており、外国人の人たちと楽しそうに会話する姉に憧れを抱いていたこと、二つ目は祖母の影響であった。沖縄戦を経験している祖母は心底、外国が嫌いであった。だが、「英語教育で伝えていかなくてはならないものがある」ということを伝え祖母を説得した。

 私は英語教育に政治的内容を取り上げたいと考えている。今、多文化社会におけるコミュニケーションが必要とされている中、中高生の若い時から政治的ニュースや話題について目を向け、自分なりの意見を持たせ、それを主張する技術を練習しておき、グローバル社会で生き抜く力を養う必要がある。

 高校生時代の教科書の内容は「外国のクリスマスについて知ろう」「Traditional customs in Japan ~日本の伝統的な風習~」などであった。個人的にはあまり記憶に残らない、ありきたりな教材という風に感じていた。同級生の友達からも「なぜか英語だけ勉強する気にならない」という声を多数聞いていた。

  実際に、ある調査機関が2012年に未成年の子どもを持つ親1000人を対象にアンケートを行った結果9割近くの親が今の英語教育に対して不満を感じているということが判明した(注) 。「勉強しても使えない」という声が多くあり、これに加え9割以上の親が「グローバルな視点をもってほしい」と答えている。

 だが、グローバルな視点といっても急に国外の問題に目を向ける授業を行うのは難しいことだと思う。理由として、知識不足であることや、距離が遠く実感が湧かないなどが挙がると考えられる。ならば、国内で起きている政治的問題、「沖縄の基地問題」について授業すれば良いのではないか。取り組み方としては、米軍基地の移設に関する是非を問うことや、反対派と賛成派の両意見を聞くということだけではなく、「現地の人だからこそ知っている基地」というのを題材にして授業を行っていきたい。私は本土の地に来て、ニュースや新聞などで沖縄の基地についての記事を目にすることが何度かあったが「反対派と警官との争いが続く」「米軍基地の入り口前で座り込み抗議」などだけであった。実際、この記事は嘘ではない。だが、このような報道は基地問題の表面的なほんの一部しか伝えてない。

 私の高校生時代の話である。昼間に米軍基地の周辺を散歩していると、「Pray for Oki」「沖縄と共に悲しんでいます」などといったプラカードをガードレール脇に掲げて、沖縄に暮らす外国の方々が暑い日差しの中、通り過ぎる車に対して何度も頭を下げていた。私はこの光景を見て涙が止まらず胸が締め付けられるような思いになった。小さい子ども、赤ちゃん、お年寄りの方々、たくさんの外国の人たちが参加していて彼らも悲しんでいるのだと身をもって感じた。

 この他にも地元の子どもたちと海辺のゴミ拾いをする活動に参加したり、外でお年寄りが倒れていて車を停めて応急処置をし、お年寄りを助け市から表彰された外国の人だっている。言葉が通じなくとも彼らは彼らなりにコミュニケーションをとり、地域の人たちと仲良くしようと心掛けているのだ。それと同時に、こういうことはメディアにあまり報道されていないのが現状であり、沖縄県外の人たちにこうした現状が届いていないと感じている。私はこのようなことを英語教育の「教材」を通じて知ってもらい、関心をもってもらいたいと感じている。そしてもちろん、中高生に英語力をつけて彼らと直接コミュニケーションをとってもらいたいと思っている。

 しかし、やはり基地問題を題材にして授業を行うことや政治的な内容を授業で扱うことに対して不満や反対意見が出てくると思う。個々の個人的な意見が反映されてしまうかもしれないし、自分自身の見解が生徒たちに影響を及ぼしてしまう可能性だってある。だが、それよりもまず日本で起きている問題に対して関心を持たせるということが大事だと考える。

 私が小学6年生の時に起きた東日本大震災。遠く離れた沖縄でも連日放送されていた。放射能問題や避難所問題、たくさんテレビで耳にしたが、さほど実感が湧かないのが事実であった。これは、私の偏見であるが私と同じ考えであった人はほかにもいたであろう。どこか、他人事のように感じていて、ただただメディアから流れる情報を鵜呑みにして理解していたつもりであった。

 これこそが、体験したかしていないかで起こる関心の違いなのだと感じた。身をもって体験しているからこそ思うことと、ただメディアや噂に聞いたのみで理解して思うこととではまったく関心の持ち方が異なるのだ。メディアの情報だけを真実と理解して鵜呑みにすることなく、常に生徒自身の考え、体験者の心情、そして私が伝えたいこと、この3つを共有していく必要があると私は思う。

 私が考える理想の英語教育のあり方は、ただ単語の意味を理解するだけではなく、生徒たち全員にとって役に立つ興味深い内容のテーマであり、なおかつ、生徒一人ひとりが深く考えさせられる内容であるべきだと考える。その為にも、様々なことに関心を持つ10代のうちに政治的な内容を含めた授業を定着させ、メディアからは報道されない現地の人がしか知りえないことなどを英語教育を通して伝えていければ自然とグローバルな視点を持ち、幅広い知識を得るきっかけにも繋がると私は思う。

(注)楽天リサーチ株式会社 2012年 日本の英語教育に関する調査
https://research.rakuten.co.jp/report/20121121/
 



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最後に改めて、このコンテストに応募してくださった皆さん、このコンテストのことを他の人に伝えてくださった皆さん、このコンテストの運営に携わってくださった皆さん ー すべての皆さんに厚く感謝申し上げます。  このコンテストを通じて、英語教育に携わる広大教英の責任の重さをいっそう感じました。これからも精進しますので叱咤激励をお願いします。  また、このコンテストは来年度も同時期に開催したいと現在のところ考えております。来年度もどうぞよろしくお願いします。



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U-19賞・U-29賞・審査員特別賞の受賞者発表です
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2017/07/20

U-19賞・U-29賞・審査員特別賞の受賞者発表です


広島大学教育学部英語教育学講座主催・英語教育小論文コンテスト「10代・20代が創る未来の英語教育」のU-19賞・U-29賞・審査員特別賞の受賞者を発表いたします。お名前は受賞者の方々がご了承してくださった形で表記しております。

受賞者の皆様、おめでとうございます。後日、賞状と賞品(図書カード)を郵送させていただきます。

なお、最優秀賞については明日発表する予定です。





U-19優秀賞作品(福田樹さん・大分県)

 友人やクラスメイトに比べて英語に劣等感を持っていた筆者は、外国人留学生と話す機会を持ったとき、得意であるはずの人たちが簡単な質疑応答もできなかったのに対し、自分はコミュニケーションに自信があったことから、「英語の力」とは何だろうと疑問を抱きます。そして変革の中にある英語教育が世界で活躍する日本人の育成ばかりをめざして、現実の学習者を視野にいれていないと断じ、学習者の視点からの2つの斬新な英語テスト改革を提案します。グローバル化という流行に敢えて疑問を呈し、不易ながら本質的な問いかけをする姿勢は新鮮であり、U-19優秀賞に値すると判断しました。


U-29優秀賞作品(出口確さん・大阪府)

 少なからぬ高校生が、英文を和訳する際、丸暗記した意味をあてはめてしまっているかもしれません。そのような悪しき状況に一石を投じようとしているのが本論文です。本論文は次のように指摘します。「語のニュアンスや、語のネットワークといった、母語話者のもつ言葉についての知識を獲得する必要がある」と。語彙指導の在り方について、さらには言語と思考の深い結びつきについて改めて考えさせる良論文であり、U-29賞に値すると判断しました。



審査員特別賞(志賀良平さん・広島県)

 志賀さんは、現在の英語教育改革の中でも、平成32年度前面実施の、小学校高学年の外国語の科目化、中学年の外国語活動の導入がもっとも大きな変化と考え、小学校英語教育について論じます。踏まえておかねばならないのは、小学校教師の多くが英語に苦手意識をもっており、たとえ国が教材を提供しても、教材研究には多くの労力と時間が必要となるだろうということです。そこで、志賀さんが訴えるのは、(中学校も含む)学校現場の労働環境の改善です。過労死ラインに達する勤務時間をもつ教師さえ少なくない中、英語教育改革の成功のためには、教師の労働条件を改善することが急務だと志賀さんは論じます。さらに、地域の同学区内の小学校と中学校の連携も不可欠だとも志賀さんは説きます。英語教育を支える基礎的な条件の整備の必要性を訴えるこの論文は、審査員特別賞にふさわしい優れたものであると判断しました。


審査員特別賞(下村梨乃さん・大阪府)

 英語でコミュニケーションをとれるという理想のためにがむしゃらに英語教育に力を入れてしまいがちですが、その根底にある国語に目を向けてみてほしい、と下村さんは訴えます。例えば “identity” といった英単語をそのまま「アイデンティティ」とカタカナ表記したり、「自己同一性」と辞書の訳語をそのまま述べるだけに終わり、文脈に応じて「自分らしさ」や「個性」と翻訳できない学習者、つまりは日本語を十分に使いこなせていない学習者は、英語も理解していないのかもしれません。国語と英語を関連付けて学ぶことは、英語でコミュニケーションをとるという目標のためにも有効であると説得するこの論文の意義は現状では大きいと考え、審査員特別賞にふさわしいと判断しました。


審査員特別賞(丸山知沙さん・愛知県)

 丸山さんの訴えは痛烈です。日本の教育改革は、「子どものためといいながら本当は勝手な大人たちのエゴなのでは?」、「勉強ができない子とできる子の間の格差をなくすためではなく、むしろ学力の格差を増やす政策ばかりなのでは?」と丸山さんは問いかけます。また、「文武両道」で「教育熱心」と言われる地域での自分の中学校生活を振り返り、丸山さんは大量の勉強や長時間の部活を要求されて疲れ果てた自分たちが、いつのまにか「どうすれば先生からいい評価がもらえるか」と、教師の顔色ばかりうかがうようになっていたと述懐します。結論として、教育政策の議論よりも必要なことは「もっと生徒たちを信じること」と喝破する丸山さんの論文には、審査員特別賞を与えるべきと判断しました。

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佳作受賞者と作品講評はこちらをごらんください
http://hirodaikyoei.blogspot.jp/2017/07/blog-post_19.html


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広大教英の学部生・大学院生9名が、小論文最優秀賞受賞者をシンポジウムで迎えます





7/23(日)の午後は楽しく意味深い語り合いの時間を持ちたいと思います。

ぜひご参加下さい!












2017/07/19

広大教英の学部生・大学院生9名が、小論文最優秀賞受賞者をシンポジウムで迎えます


7/23(日)には、英語教育小論文コンテストの最優秀受賞者が授賞式に来られます(内諾済み)。

その13:30からの授賞式に続いて、14:00からはシンポジウムを開催します。


■ 登壇者

シンポジウムでは、広大教英の学部生・大学院生の以下9名(五十音順)が、最優秀論文の提言をどう活かすかという観点から語り合います。


馬越菫(学部1年生)
大成安澄 (学部4年生)
下岡奈々恵(学部4年生)
高橋香奈 (学部2年生)
中原 瑞公(学部3年生)
秦史典 (修士課程1年生)
渕上なな  (修士課程1年生)
眞子和也  (修士課程1年生)
水島祐人  (修士課程1年生)



■ 語り合いの作法

シンポジウム(およびその後に続く対話の集い)では以下の作法で語り合い・対話を進めたく思います。



言い換えるなら、「誰も対等に、威張らずに、いろいろな意見を出し合いながら、自分の気持ちを込めて、どんどん発言してゆきましょう」ということです。

楽しく意義深い語り合いにしたいと思います。

ぜひ皆さんもご参加ください!一人でも多くの方の参加をお待ちしております。

7/23(日)の13:30までに、広島大学教育学部K102教室にお越しください(開場は12:30の予定です)。


広島大学東広島キャンパスへのアクセス
https://www.hiroshima-u.ac.jp/access/higashihiroshima

教育学部K102教室へのアクセス
https://www.hiroshima-u.ac.jp/access/higashihiroshima/busstop_higashihiroshima/aca_3











英語教育小論文コンテストの佳作受賞者を発表いたします


広島大学教育学部英語教育学講座主催・英語教育小論文コンテスト「10代・20代が創る未来の英語教育」の佳作受賞者を発表いたします。お名前は受賞者の方々がご了承してくださった形で表記しております。

受賞者の皆様、おめでとうございます。後日、賞状を郵送させていただきます。

なお、U-19賞、U-29賞については明日発表する予定です。





佳作10名(五十音順)


佳作(岡田歩咲さん・岐阜県)

 現在高校生である岡田さんは、「生徒が英語を使う必然性がない」という学校英語教育の問題点を、生徒一人ひとりにパソコンを準備し、それぞれが外国の提携校の高校生と英語で話をするプログラムによって解決しようと提案します。話の内容は日常生活や伝統文化についてなどから始まりますが、次第に相手の国について調べたり、その人にこちらの何を話そうかを考えたりする中で国際理解も促進されるだろうと岡田さんは述べます。決して実現不可能な提案ではありません。英語教育関係者はこういったアイデアを育てるべきだと思わされる作品でした。


佳作(沖原弘明さん・山口県)

 若手英語教師の沖原さんは、英語授業における良質なコミュニケーションを、「互いに自分の考えたことを共有し、議論することを通して、自立に向けて互いを高めあうことができる」ものだと定義します。その定義からしますと、現在の生徒がとるコミュニケーションは、他者に対する甘え(依存)が多く、さらに「正解」を言おうとすることだけにとどまっていると沖原さんは分析します。これを改善するためには、生徒が自分ひとりで考える機会を十分に確保すること、教師が正解がない問い (open questions) を大切にすることが必要と論じます。現場でじっくり考えながら出された論だと拝読しました。現場教師がこのように発言することがこれからは本当に重要になってゆくとも思わされました。


佳作(川﨑嵩士さん・神奈川県)

 川﨑さんは、英語教師がどのような方向性を向いて授業をしているのか分からない、と指摘します。教師は、まずは生徒をどのレベルにまで到達させたいのかビジョンを明確に示すべきだというのが川﨑さんの主張です。川﨑さんはさらに "Penny wise, pound foolish"という諺を引用し、細かい点にこだわり、生徒の英語に対する興味を損ねてしまうことの愚も説きます。さらに英語授業に関する学会や研究会のあり方について、川崎さんは、教師の新しい試みに対して「これはだめ」とか「この単語は中学生には分からない」などと頭ごなしに説教するようなアドバイスが飛び交うようでは新しいものは生まれないと述べます。英語教師が謙虚に聞くべき点の多い論文でした。


佳作(清水渚さん・愛知県)

 現在大学で英語教育について学んでいる清水さんは、今一度原点に戻って英語教育を考えるべきだと主張します。清水さんの第一の提案は生徒主体の授業を作ることですが、これを彼女は自分が授業指導案を作りながら、なかなか生徒の立場に立って考えることができないという現実に基いて主張しています。カウンセリングといった生徒の気持ちを理解するための学びも重要だと清水さんは考えます。第二の提案は、言語習得上の生物学的な優位性を考えての「早期英語教育」ですが、清水さんはこれを、英語を「勉強」する場所ではなく、母国語以外の言語に「触れる」環境とするべきだと論じます。自ら深く考えての立案だと拝読しました。


佳作(キッズ・クエストの鈴木小晴さん・愛知県)

現在小学校6年生の鈴木さんは、近所の『おしゃべりくらぶ』 での実践の報告を通じて、英語教育・言語教育のさまざまな可能性について教えてくれます。初対面時の日本語での挨拶と直結した英語習得、親子でのじゃんけん大会を通じての英語習得、自分の世界を広げる英語地図、小学生が中学校教師のねらいを想像しながら考える英語テストなど、民間実践にはすばらしい知恵があることがよくわかります。2943字の力作に感謝します。


佳作(K・Hさん・広島県)

 現在高校生のK・Hさんは、熱心に勉強する日本人が英語を喋れないのは「生きる力」、あるいは「学ぶ意欲や自分で問題解決する資質や能力」を十分に養っていないからだと考えます。そのためには、減点評価ではなく、自ら考え、判断し、表現することによってさまざまな問題に積極的に対応し解決する力を培えるように学校という集団をもっと活用するべきと論じます。同時に学校や教師だけでなく生徒も「この英語の成績でどこを受験するか」ではなく、「英語を使うことでどんな生き方をしたいか」を考える必要があると説きます。学校英語教師が拝聴すべき意見だと思わされました。


佳作(藤河小百合さん・広島県)

 現在高校生の藤河さんは、英語授業でのせっかくのグループ活動も、英語の基礎知識の定着がないと有効活用できないと論じます。そこで藤河さんが提案するのは、(1) 小学校でローマ字よりも英語を先に導入すること、(2) その際にフォニックスの原則で導入すること、(3) 発音記号も読めるようにしておきその後の学習に活かせるようにしておくこと、(4) 中学校では文法構造の自覚を促すこと、です。英語教育関係者の思考を刺激する提案に感謝します。


佳作(中川さん・広島県)

 中川さんは、学習者が主体的に学ぶためには、学ぶ対象の(完全な全体像とは言わないにせよ)だいたいのイメージをもっておくことが重要と考えています。そこで中川さんは、英語学習の導入はまず「言語」についての学習をすることから始めるべきと提言します。世界の言語の中で英語がどのような特徴をもっているのか、また、言語はどのように発達していったのかといった概説を踏まえて英語を教えてゆき、例えば「三単現のs」を教えるときにでも、言語史・英語史の知見を少し踏まえれば、学習者は少しでも学びに主体的になれるのではと主張します。なるほどと思わせる論考でした。


佳作(西谷直登さん・大阪府)

 西谷さんは、「グローバル化の進展によって英語力の向上が重要となっている」や「英語を学ぶことが異文化理解につながる」といった通説を根底的に疑います。その上で、小学校での英語教育といった、日本人全員が受ける教育の改革を進めるためには、できるだけ多くの人が納得できる根拠、とりわけ科学的根拠を示すべきだと論じます。現在の英語教育改革は、「ある種の都市伝説に頼った曖昧なもの」という西谷さんの主張を、英語教育関係者はどう受け止めるでしょうか。


佳作(匿名希望さん・兵庫県)

 匿名希望さんは、端的に「増やすなら減らせ」と主張します。 「何かを増やすためには何かを減らさないといけないが、文部科学省はそれを行っていない」というわけです。現在の教育現場で無駄になっているものはないだろうかと、匿名希望さんは問いかけます。また、現代日本での英語使用状況からすれば、日本の英語教育において力を入れるべきは小中高ではなく大学なのではないだろうかとも論じます。思考が刺激される論文でした。



選外

その他、英語のコミュニケーションでは最初から高望みせずにまずは日常的な会話から始めるべきだと主張する高校生のFさん、日本の英語教育における一貫性について論じるKさん、フィンランドにおける体験を基にこれから進行するIT化の中での英語教育について考察するNさん、学生英語劇団体の実践から英語学習を再考するOさん、英語科と国語科の一部を統合した「思考と表現」という科目の創設について語るSさんなどの論考も興味深いものでしたが、残念ながら今回は選外となりました。


終わりに

 以上の論文だけでなく、読ませていただいたどの論文にも「おっ」といった驚き、「なるほど」という納得感、「そうだよね」という共感などを覚えました。改めて、論文を提出してくださったすべての皆さんに感謝します。また、このコンテストの広報をしてくださった皆さん、論文を提出するところまではいかなかったものの英語教育についての関心を高めてくださった皆さんにも感謝します。

 皆さんの意気を感じ、広大教英は、英語教育の改善にいっそう励んでゆきますので、これからもどうぞ叱咤激励をよろしくお願いします。






2017/07/11

7/21(金)・22(土)・23(日)はぜひ広大教英にお越しください。


英語教育に関心をお持ちの皆さん、広大教英への進学を考えている皆さん、7/21(金)・22(土)・23(日)はぜひ広大教英にお越しください!







2017/07/09

小論文コンテストは第一次審査が終わりました。7/23は某新聞が取材に来てくれるかもしれません。


広大教英主催の「英語教育小論文コンテスト」にご応募してくださった皆様、改めてご応募に感謝いたします。

現在、第一次審査が終わり、これから最終的に賞を決定しようとしているところです。

賞が決まりましたら、このブログで発表させていただきます。

発表は7/17(月)以降になるかと思います。今しばらくお待ち下さいますようお願い申し上げます。






また、当日の授賞式・シンポジウム・対話の集い、およびワンコインパーティはどなたでも参加できるものです(ワンコインパーティだけ茶菓代として500円をいただきますが、あとは無料です)。

当日は、できるだけ多くのさまざまな人が、安心して率直に語り合える場所にします。

また、現在交渉中ですが、某新聞が取材に来てくれるかもしれません。

7/23(日)の午後は、ぜひ広島大学教育学部にお越しください!



広島大学へのアクセス

広島大学教育学部の位置 (Kと書かれた建物群の下(南)のK102教室が会場です)





2017/07/06

7/21(金)のD.アトキンソン教授の講演会場が、第一会議室(教育学部管理棟2階)に変更になりました。

Alternative Approaches to Second Language Acquisition などの著作でも有名なドワイト・アトキンソン教授の講演の会場が変更になりました。教育学部管理棟2階の第一会議室です。

アトキンソン教授は、第二言語教育を根源的に考えている稀有な研究者です。参加無料・申込み不要ですので、ぜひお越しください!






■ タイトル
Homo Pedagogicus : The Evolutionary Nature of Second Language Teaching

■ 講師
Professor Dwight Atkinson (the University of Arizona)

■ 日時
2017年7月21日(金) 13:10-14:20

■ 場所
広島大学教育学部管理棟2階第一会議室(教育学部玄関を入ってすぐ左の階段を上がってください)

■ 使用言語
英語(必要に応じてQ&Aの際に通訳をする場合もありますが、原則として講演の通訳はしません)。

■ 参加費・事前申込み
ありません。当日、会場に直接お越しください。

■ 講演内容
     Second language teacher educators tirelessly teach others how to teach. But how often do we actually define teaching? Without explicit, focused definitional activity on this fundamental concept in second language teaching (SLT), it remains implicit and intuitive--the opposite of clear, productive understanding.
     I therefore explore the definitional question, "What is teaching?" in this paper. First, I establish the claim that the SLT literature rarely defines teaching explicitly, in part because of its technical "how-to" focus, and that this is a problem. Second, I offer a heuristic definition of teaching as evolutionarily adaptive behavior--as existing in humans because it enables flexible adaptation to extremely varied and complex ecosocial circumstances. In contrast, animals have quite modest adaptive powers, so it may come as a surprise that teaching as evolutionarily adaptive behavior is not uniquely human. Therefore, third, I review research comparing animal and human teaching in order to help us understand the latter better. Fourth, I describe teaching as studied by anthropologists--as it varies across human groups. It turns out that formal teaching is relatively rare when viewed from an anthropological perspective, and relatively recent at that. Fifth and finally, I employ the results of this definitional exercise to examine, in an exploratory way, what happens in SLT classrooms.



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【7/29開催・福岡】2017年度高等学校教員のための指導力向上セミナーを開催します


この度、広島大学大学院 教育学研究科では、高等学校教員等を対象として、「これからの高校教育はいかに変わるか? -新学習指導要領を見据えた新たな高校教育のゆくえ-」として、指導力向上セミナーを開催します。

皆様お誘いあわせの上、ぜひご参加下さい。現職教員はもとより、高校教員を目指す学部生・大学院生も歓迎します!




日時: 2017 (平成29)年7月29日(土) 10時~16時30分

場所: アクロス福岡 6・7階会議室(福岡市中央区天神1丁目1番1号)

対象: 高等学校教員、教育委員会関係者、その他高等学校の教育に関心を抱く大学院生など

入場料及び参加費: 無料(事前申込みは不要です。)

内容:
これからの高校教育はいかに変わるか?
-新学習指導要領を見据えた新たな高校教育のゆくえ-



詳しくは以下のページを御覧ください。




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2017/07/03

「自分らしい授業の実現を目指して―新米の先生の実践の語り―」 (7/23(日)午前の部)


以下は、7/23(日)の午前中に広島大学教育学部K104で行われる学会活動の内容、および司会の樫葉みつ子先生からのメッセージです。

卒業生・修了生の皆さん、ぜひご参集ください!





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10:50 ~ 12:30 実践研究発表会

「自分らしい授業の実現を目指して―新米の先生の実践の語り―」


司会: 樫葉 みつ子(広島大学大学院教育学研究科)

第1発表者: 池下 采 先生(香川県立坂出高等学校)
テーマ:コミュニケーション英語Ⅱを「コミュニケーションの授業」にするための試み―チャットや音読を取り入れて―

第2発表者: 角谷 拓哉 先生(広島文教女子大学附属高等学校)
テーマ:Silent Reading While Listening (SRWL) を用いた内容理解―英語の直読直解を目指して―

第3発表者: 三浦 宏貴 先生(香川県立善通寺第一高等学校)
テーマ:キーワードを用いたリテリングと要約の指導―高校2年生を対象とした半年間の実践とその成果―

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この春に教職に就いたばかりの池下先生と角谷先生、今年で3年目を迎える三浦先生、フレッシュな3名の先生の登場です。慣れない学校現場で試行錯誤しながらも、自分らしい授業の実現を目指して、こだわりをもって取り組んだ実践を報告します。

池下先生は、身近な話題についての簡単なチャットを取り入れたり、音読の練習方法に工夫を加えたりするなどして、授業の活性化を図りました。角谷先生は、和訳にとらわれている生徒の読み方を変えるために、silent reading while listeningという方法を用いて読解指導を試みました。三浦先生は、クラスの大半を占める英語を苦手とする生徒を対象に、リテリングや要約ができるようにする指導を半年間にわたって継続しました。

理想の授業像を自分の成長と共に変化させて、よりよい実践を追い続けることは、若い教師だけではなく、すべての教師の課題です。駆け出しの先生の語りに耳を傾けながら、自分自身の実践にも思いを馳せてみませんか。


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ちなみに午後の部は、どなたでもご参加できます。
英語教育に興味をもちさまざまな人と語り合いたい方々、
教英進学を考えている高校生・大学生の皆さん、
どうぞお気軽にご参加ください。
(参加申し込みは特にありません)















当たり前のことですが、こちらがある程度英語ができると認められると相手は手加減などしてくれません



以下は、教英の大学院(修士課程)を修了し、現在、英国のある大学院の修士課程で勉強しているK君からのメールです。

K君は、資格試験の点数でいうならそれなりに高い「英語力」をもっていますが、それでも英国に留学し、英語母語話者の若者と議論をすると、なかなか苦労します。

現在の日本では、ますます資格試験で「英語ができる/できない」が定められようとしていますが、英語教育関係者は、それとは異なる物差しをもっていなければならないのかとも思わされます。

そんな問題提起も含めて、以下の文章を読んでいただけたら面白いかもしれません。(写真はK君が先日訪れたCotswolts の風景だそうです)。





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昨年の9月の学期のスタートからほぼ10か月経ち、こちらの生活にも慣れてきました。しかし正直なところ、本当の意味でこちらの生活に慣れてきたのはほんの最近です。

といいますのも、一度でも海外に行かれた方はお分かりになるでしょうが、外国人が言語もままならないまま現地で生活していくというのは非常に大変なことです。私は10年以上勉強して留学しましたので(形式的な英語の試験が関わる限りでは)十分英語が流暢な部類に属すると思いますが、それでも最初は非常に不安でした。

簡単な買い物ならあまり言葉などできなくても How much?と Thank you さえできれば苦労しませんがこちらは海外で学問を学びにきているわけで、例えば授業でネイティブとディスカッションをするとなると相手の速さについていけずしどろもどろもいいところでした。

当たり前のことですが、こちらがある程度英語ができると認められると(そしてそう認められることは喜ばしいことですが)相手は手加減などしてくれません。ネイティブ2人の会話に1人で参加するともなれば、見たことも聞いたこともない idioms / jargon の応酬で会話に参加している気さえしなくなるほどです。そういう日々の中で自分が deficient だと思い始めたとき、’ a competent (deficient) speaker’ とは何ぞやと思うようになりました。私がネイティブに Am I a deficient speaker of English? と問えば I don’t think so と返ってくるはずです(そう思いたい)。今ではくだけた会話にもほとんど苦労することはありませんが、この問題は自分の経験の枠のみならず、英語教育の文脈においても考えるべき問題であるように感じました。

学校教育では英語の点数は一律的に点数化され「できる子」と「できない子」が必然的に生まれるものですが、なにを規準として評価するのかというのは単なる成績評価のみならず生徒の英語学習の指針や生徒のアイデンティティを考慮する上でも重要な問題です。では、その様相をいかにして捉え、生徒に教え、評価するかというのは英語教師としての必要条件であるように感じました。

全世界の教育における点数化の波の中で客観的・一律的な点数評価に抗うのは日に日に難しくなる一方ですが、それでも主体としての生徒とどう関わるかというのは未だに教師の手にあるはずです。であれば、どう実践に組み込むかという問題は別として、少なくとも言語使用、言語習得の実態を生徒に明確に説明できるだけの知識(もしくは常識)を持つことは教師としての責務かと思いました(とほざいてみる)。














「いま・ここ・わたし」を離れたことば

以下に引用するのは、下の章を使った授業を受けた院生さんの感想の一部です。 Experience and Thinking (Chapter 11 of Democracy and Education) http://yanaseyosuke.blogspot.com/2...