英語教育小論文コンテストの佳作受賞者を発表いたします


広島大学教育学部英語教育学講座主催・英語教育小論文コンテスト「10代・20代が創る未来の英語教育」の佳作受賞者を発表いたします。お名前は受賞者の方々がご了承してくださった形で表記しております。

受賞者の皆様、おめでとうございます。後日、賞状を郵送させていただきます。

なお、U-19賞、U-29賞については明日発表する予定です。





佳作10名(五十音順)


佳作(岡田歩咲さん・岐阜県)

 現在高校生である岡田さんは、「生徒が英語を使う必然性がない」という学校英語教育の問題点を、生徒一人ひとりにパソコンを準備し、それぞれが外国の提携校の高校生と英語で話をするプログラムによって解決しようと提案します。話の内容は日常生活や伝統文化についてなどから始まりますが、次第に相手の国について調べたり、その人にこちらの何を話そうかを考えたりする中で国際理解も促進されるだろうと岡田さんは述べます。決して実現不可能な提案ではありません。英語教育関係者はこういったアイデアを育てるべきだと思わされる作品でした。


佳作(沖原弘明さん・山口県)

 若手英語教師の沖原さんは、英語授業における良質なコミュニケーションを、「互いに自分の考えたことを共有し、議論することを通して、自立に向けて互いを高めあうことができる」ものだと定義します。その定義からしますと、現在の生徒がとるコミュニケーションは、他者に対する甘え(依存)が多く、さらに「正解」を言おうとすることだけにとどまっていると沖原さんは分析します。これを改善するためには、生徒が自分ひとりで考える機会を十分に確保すること、教師が正解がない問い (open questions) を大切にすることが必要と論じます。現場でじっくり考えながら出された論だと拝読しました。現場教師がこのように発言することがこれからは本当に重要になってゆくとも思わされました。


佳作(川﨑嵩士さん・神奈川県)

 川﨑さんは、英語教師がどのような方向性を向いて授業をしているのか分からない、と指摘します。教師は、まずは生徒をどのレベルにまで到達させたいのかビジョンを明確に示すべきだというのが川﨑さんの主張です。川﨑さんはさらに "Penny wise, pound foolish"という諺を引用し、細かい点にこだわり、生徒の英語に対する興味を損ねてしまうことの愚も説きます。さらに英語授業に関する学会や研究会のあり方について、川崎さんは、教師の新しい試みに対して「これはだめ」とか「この単語は中学生には分からない」などと頭ごなしに説教するようなアドバイスが飛び交うようでは新しいものは生まれないと述べます。英語教師が謙虚に聞くべき点の多い論文でした。


佳作(清水渚さん・愛知県)

 現在大学で英語教育について学んでいる清水さんは、今一度原点に戻って英語教育を考えるべきだと主張します。清水さんの第一の提案は生徒主体の授業を作ることですが、これを彼女は自分が授業指導案を作りながら、なかなか生徒の立場に立って考えることができないという現実に基いて主張しています。カウンセリングといった生徒の気持ちを理解するための学びも重要だと清水さんは考えます。第二の提案は、言語習得上の生物学的な優位性を考えての「早期英語教育」ですが、清水さんはこれを、英語を「勉強」する場所ではなく、母国語以外の言語に「触れる」環境とするべきだと論じます。自ら深く考えての立案だと拝読しました。


佳作(キッズ・クエストの鈴木小晴さん・愛知県)

現在小学校6年生の鈴木さんは、近所の『おしゃべりくらぶ』 での実践の報告を通じて、英語教育・言語教育のさまざまな可能性について教えてくれます。初対面時の日本語での挨拶と直結した英語習得、親子でのじゃんけん大会を通じての英語習得、自分の世界を広げる英語地図、小学生が中学校教師のねらいを想像しながら考える英語テストなど、民間実践にはすばらしい知恵があることがよくわかります。2943字の力作に感謝します。


佳作(K・Hさん・広島県)

 現在高校生のK・Hさんは、熱心に勉強する日本人が英語を喋れないのは「生きる力」、あるいは「学ぶ意欲や自分で問題解決する資質や能力」を十分に養っていないからだと考えます。そのためには、減点評価ではなく、自ら考え、判断し、表現することによってさまざまな問題に積極的に対応し解決する力を培えるように学校という集団をもっと活用するべきと論じます。同時に学校や教師だけでなく生徒も「この英語の成績でどこを受験するか」ではなく、「英語を使うことでどんな生き方をしたいか」を考える必要があると説きます。学校英語教師が拝聴すべき意見だと思わされました。


佳作(藤河小百合さん・広島県)

 現在高校生の藤河さんは、英語授業でのせっかくのグループ活動も、英語の基礎知識の定着がないと有効活用できないと論じます。そこで藤河さんが提案するのは、(1) 小学校でローマ字よりも英語を先に導入すること、(2) その際にフォニックスの原則で導入すること、(3) 発音記号も読めるようにしておきその後の学習に活かせるようにしておくこと、(4) 中学校では文法構造の自覚を促すこと、です。英語教育関係者の思考を刺激する提案に感謝します。


佳作(中川さん・広島県)

 中川さんは、学習者が主体的に学ぶためには、学ぶ対象の(完全な全体像とは言わないにせよ)だいたいのイメージをもっておくことが重要と考えています。そこで中川さんは、英語学習の導入はまず「言語」についての学習をすることから始めるべきと提言します。世界の言語の中で英語がどのような特徴をもっているのか、また、言語はどのように発達していったのかといった概説を踏まえて英語を教えてゆき、例えば「三単現のs」を教えるときにでも、言語史・英語史の知見を少し踏まえれば、学習者は少しでも学びに主体的になれるのではと主張します。なるほどと思わせる論考でした。


佳作(西谷直登さん・大阪府)

 西谷さんは、「グローバル化の進展によって英語力の向上が重要となっている」や「英語を学ぶことが異文化理解につながる」といった通説を根底的に疑います。その上で、小学校での英語教育といった、日本人全員が受ける教育の改革を進めるためには、できるだけ多くの人が納得できる根拠、とりわけ科学的根拠を示すべきだと論じます。現在の英語教育改革は、「ある種の都市伝説に頼った曖昧なもの」という西谷さんの主張を、英語教育関係者はどう受け止めるでしょうか。


佳作(匿名希望さん・兵庫県)

 匿名希望さんは、端的に「増やすなら減らせ」と主張します。 「何かを増やすためには何かを減らさないといけないが、文部科学省はそれを行っていない」というわけです。現在の教育現場で無駄になっているものはないだろうかと、匿名希望さんは問いかけます。また、現代日本での英語使用状況からすれば、日本の英語教育において力を入れるべきは小中高ではなく大学なのではないだろうかとも論じます。思考が刺激される論文でした。



選外

その他、英語のコミュニケーションでは最初から高望みせずにまずは日常的な会話から始めるべきだと主張する高校生のFさん、日本の英語教育における一貫性について論じるKさん、フィンランドにおける体験を基にこれから進行するIT化の中での英語教育について考察するNさん、学生英語劇団体の実践から英語学習を再考するOさん、英語科と国語科の一部を統合した「思考と表現」という科目の創設について語るSさんなどの論考も興味深いものでしたが、残念ながら今回は選外となりました。


終わりに

 以上の論文だけでなく、読ませていただいたどの論文にも「おっ」といった驚き、「なるほど」という納得感、「そうだよね」という共感などを覚えました。改めて、論文を提出してくださったすべての皆さんに感謝します。また、このコンテストの広報をしてくださった皆さん、論文を提出するところまではいかなかったものの英語教育についての関心を高めてくださった皆さんにも感謝します。

 皆さんの意気を感じ、広大教英は、英語教育の改善にいっそう励んでゆきますので、これからもどうぞ叱咤激励をよろしくお願いします。






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