2017/10/03

「国際学会での発表を振り返って」(IK君・修士課程二年生の感想)






以下は、この夏に国際学会で発表をしたIK君 (修士課程二年生) の文章です。



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 2017713日から715日に、インドネシアのジョグジャカルタで開催された「ASIA TEFL 2017」に発表者として参加させていただきました。今回、ここに国際学会での発表を通して、私が感じたこと、学んだことを文章にさせていただきます。



 今回の「ASIA TEFL 2017」での発表は、国際学会で発表をする初めての経験でした。インドネシアに到着して以降、今まで感じたことのないような不安や緊張を感じました。せっかく少し高めのホテルに泊まったにも関わらず、結局、発表が終わるまでくつろぐことができませんでした。このように、学会中、ほとんど地に足が着いていないような状態でしたが、改めて振り返ってみると様々なことを学ぶことができ、大変貴重な経験をすることができたと感じています。そこで、今回、私が学んだことや経験したことの中から2つを絞り、書きたいと思います。



 1つ目は、「英語で発表 (プレゼンテーション) をすることの心理的負担」です。最初に書いたとおり、国際学会で発表をすることは、今まで感じたことのないような不安や緊張を私に感じさせました。実際、ホテルで1人になったときには、発表に申し込んだことへの後悔を感じるほどでした。しかし、改めて自分の不安や緊張を振り返ってみると、英語の授業の中で、児童や生徒が抱く不安や緊張と同じなのではないかと思いました。英語でプレゼンテーションを行うことは、英語の授業でよく行われている活動の1つだと思います。(実際に私も教育実習の中で行いました。) しかし、生徒がインドネシアでの私と同じように、英語でプレゼンテーションをすることに対して不安や緊張を感じるとすると、それはとてつもなく大きな不安や緊張です。そして、その不安や緊張が大きすぎて、英語の授業が嫌になることも当然あるのではないかと思います。英語で発表 (プレゼンテーション) をする活動が悪いと思ったということではありません。英語で発表 (プレゼンテーション) をするための知識や技能の指導を段階的に行うだけでなく、生徒が自信を持つことができるように、やりたいと前向きに思うことができるように、心理面の段階を考慮することも大切なのだと感じたということです。そして、知識や技能面と心理面の両方で段階を意識する必要性は、生徒が英語を使う活動すべてに共通するものだと思います。



 1つ目として書いたことは、英語教師として働いたことがある人には当然のことかもしれません。しかし、今までそのことを意識したことがなかった私にとっては、とても重要な気付きとなりました。そして来年度から英語の教師として働く身として、現場に出る前に本当に重要な経験ができたと思います。





 2つ目は、「学会の雰囲気」です。今回、国際学会への参加そのものも私にとっては初めての経験でした。したがって、目にするものや雰囲気などあらゆるものが私にとっては新鮮でした。その中でも、特に驚いたことは、発表中の部屋の雰囲気です。今まで日本で見てきた学会では、プレゼンターとリスナーは1対1の関係であり、1対1の関係が部屋の中にたくさん存在しているという印象でした。つまり、プレゼンターが発表をし、質疑応答の時間では、プレゼンターとリスナーの1対1の質疑応答・意見交換が何度も行われるということです。(日本での学会参加経験も多くありませんので、すべてがそうとは言い切れません。) しかし、ASIA TEFL 2017では少し違っていました。プレゼンターが発表をし、質疑応答の時間があるところまでは同じですが、質疑応答の時間に行われることが異なります。1人のリスナーが意見を述べたかと思えば、その意見を踏まえて、別のリスナーが意見を述べます。そして、リスナー同士のやりとりが始まります。またプレゼンターもそのまま傍観しているのではなく、機会を見つけて、自分の意見を述べます。そうしていつのまにかフロアを含めたディスカッションが始まっています。それは、プレゼンターが自分の研究を報告しているだけというよりは、ディスカッションのテーマを提供している、リスナーは受付で配られた ”Participant” という名札通り、ディスカッションへの参加者でした。



 前者が日本の典型的な学会で、後者が世界のスタンダードということを言いたいわけでもありません。またどちらがより良いのかということもわかりません。しかし、リスナーがただ聞くだけで終わらないという学会の雰囲気は自分にとって新鮮でしたし、自分の学会への参加態度を見つめ直すよいきっかけとなりました。





 以上、ASIA TEFL 2017の参加を通して、私が主に感じたことを2つ書かせていただきました。最後に学会終了後の柳瀬先生とのメールを通して、気づいたことを書きたいと思います。



 それは「英語ができることの価値」です。柳瀬先生から学会後、『よく世間では「英語ができるといいね」と言いますが、入船くんも今回そう感じたのではないでしょうか?日本を始めとした非英語圏でやられていることのレベルは決して低くありません。でも英語でないと相手にされないんですよね。』というメールを頂きました。本当にそのとおりだと思いました。「日本のような非英語圏で行われていることは、英語で発信して初めて評価の対象として見てもらえる。そして、何より英語ができることで、日本人以外の人から意見をもらえたり、日本以外の国の教育について知り、視野を広げたりすることができる」これが、英語ができることの1つの価値だと思いました。





 お恥ずかしい話、今回ASIA TEFL 2017に参加するまでは、英語を勉強することの意味を感じたことがありませんでした。(実際、教採で聞かれたら、何と答えるか迷っていました。) しかし、ASIA TEFL 2017に参加・発表をすることでその意味を少し感じることができました。英語教師として働く前に経験ができたことは本当に良かったと思います。(英語教師が英語を学ぶことの良さを感じていないというのはいかがなものかとずっと思っていましたので。)



 大学院が終わり、英語教師として現場に出るまで半年を切りました。この時期になって、努力不足や知識不足、経験不足を毎日感じています。しかし、少しでも知識や経験を増やせるように、少しでも吸収して、現場に出ることができるように、残りの半年も頑張りたいと思います。



最後に、学会参加の経済的援助をしていただいた「グリーン・ウィング教育奨学金」・一般社団法人グリーン・ファミリー様にはこの場をお借りして、改めてお礼を申し上げたいと思います。





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グリーン・ウィング教育奨学金は、広島大学大学院教育学研究科、教育学部および特別支援教育専攻科の学生を対象として、学生の海外経験を支援しています。

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