2016/11/16

二重ループ学習についての学部一年生の感想


11/11-12に山口市で開催された全英連(全国英語教育研究団体連合会)に参加しました。全国各地から英語教師が集まる大きな大会ですが、教師としては多くの卒業生に会えるのが楽しみです。(みなさん、元気そうで何よりでした)。




管理人はある発表者の「指導助言者」として「二重ループ学習」といった概念について解説をしたのですが、

ダブルループラーニング (double-loop learning 二重ループ学習)
についての私的まとめ



その話を授業でも少ししたところ、学部一年生が感想を書いてくれました。

以下にそのごく一部を紹介します。

学生さんの多くは「こういった深い思考は授業の中ではほとんど経験したことがない。経験したことがあるとすればそれは部活だ」と言いますが、今年もそういった発言がみられたことは、教師としてよくよく考えなければならないことだと思わされます。



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■ ゼロ学習と単一ループ学習と二重ループ学習について、私はゼロ学習に満足していたと思いました。自分の中にある前提、例えば「これをしたら成績が上がるだろう」とか「みんながやっているからきっといいことなんだ」と勝手に決めつけているものをもとに計画を立てていました。そして、その計画通りまたは計画以上のことができたらそれに満足して納得してそこで終わっていました。

 私がこのまま教師になってしまえば、与えられた教材について考えることもせず、ただ授業をして生徒がそこそこの点数を取ってくれれば満足してしまう、そんな教師になってしまうと思います。しかし今回の授業を受け、修正することまたは正しいと思っていることまでも問いただしていかなければならないと思いました。

 これまでに、計画を立て、実行できなかった時に計画を修正することはあっても、自分が信じている根本的なものを疑ったことはありませんでした。なぜなら、最初から正しいと思っていることを疑って間違っていると断定することは困難でとても勇気がいることだからです。しかし、それができてこそ成長していくと思いました。


■ はじめに二重ループ学習についてであるが、正直私は、今まで元から定められた前提を疑うということを考えたことがなかった。この考え方を授業で学ばなければ将来きっと私は、上司(先輩の先生)から言われたことが正しいと思い込み(たとえそれが明らかに自分の考えと違っていても)、前提を疑う勇気を持てていなかっただろう。その前提が指導要領やもっと上から定められたものであれば尚更である。

 定められたものを変えるには多くの様々な知識や教養が必要だと思う。変えようと思っても自分に自信がなかったら躊躇してしまうし、前提を疑っても今度は自分の前提が間違っている可能性もある。しかし、前提を変えることを恐れてはいけないと思った。前提を変え、しばらくして自分が間違っていると気づいたらまたその前提を修正すればいい(またそこから試行錯誤していくことは簡単なことではないが)。そして、より良いものにしようと努力することが大切だと思った。

 前提を変えることは相当勇気のいることだと思う。だが、勇気を持たなければ何事も前進しないし、良い方向には向かっていかない。将来、単一ループ学習に陥らないように「根本を見直す」ということと、「前提を変える勇気を持つ」ということを忘れないでいたい。


■ 中学生の時、バレー部で毎日バレーノートをつけていました。その日の練習メニューやできたこと、できなかったこと、先生やチームメイトからのアドバイス等を記録し、次の日からの改善を図るためです。これは単一ループ学習に分類されると思います。

 二重ループ学習がバレーボールにあったかと考えると、やはりスタメンの移動やポジションの入れ替えが思い浮かびます。個々の技能を好プレーのためにどう改善していくのかではなく、そもそもそのポジションに向いているのか、前提を問い直した顧問の采配がなされていたと今は思います。また「なぜ自分がキャプテンなのか、もっと他にふさわしい人がいるのではないか」と直談判したことを思い出し、今まで二重ループ学習は自分はしたことはないと思っていましたが、もしかしたらあの時は無意識に、その入り口に立っていたのではないかと今になって思います。

 また、授業で説明を受けている時、ふと、にしき堂の「100回試みて1000回改めました」という生もみじのCMを思い出しました(広島ではよく流れます)。文字面のみ見ると、行動修正を繰り返した単一ループ学習のように見えますが、従来の餡とは異なるチーズクリームやチョコレートなどを使用した商品を展開しているところを見ると、二重ループ学習を取り入れたため、幅広いニーズに応え支持され続けることに成功したのではないかと思いました。

 単一ループ学習で終わらない(例えば、そもそも何のために学習するのか)前提を問い直して根本的な修正・工夫を行える教師になるために、まず学習者として自分の周囲でもっと改善・変革できるようなものはないかアンテナを張り続けていきます。



■ 単一ループ学習と二重ループ学習の話を聞いたのでそのことについての感想を書きたいと思います。この二重ループ学習の話は自分が非常に考えさせられるものでした。私は部活動で卓球をしているのですが、弱くて全然勝つことができません(そんなレベルならやめて勉強をした方がいいと言われれば、そうなのかもしれないと内心では思ってしまうレベルです)。

 そんな状況の中で自分のいまやろうとしているプレーは本当に正しいのか、求めているプレースタイルそのものが間違っているのではないかと思うことが多々あります。これは二重ループ学習に近いものなのではないかと思います。そしてもし自分のしていることが二重ループ学習の一種だとするならば、前提を変えるというのはなかなか難しい、決断に勇気がいる行為だと身を以て体験していることになるんだと思います。

 私は高校生の時に卓球のプレーに関し、前提を変えたことがあります。そしてそれはお世辞にも成功とは言いがたい部分もありました(成功した部分もありましたが)。先生は前提を変えて立てた(新たな前提)そのものが間違わないようにしなくてはいけないと仰っていましたが、これをするためには熟考に熟考を重ねなければいけず、時間をかけてすべきことなのだろうと思いました。


■ 今回の米大統領選においてトランプ氏が勝利したことに対して不安を口にしていた私たちに、先生は広い世界で見ると大きな変化はたくさん起こるし現に起こってきたとおっしゃられました。私は、例えば第二次世界大戦やソ連の崩壊、コンピュータ-の台頭といった世界中で起こった大きな変化を体験したり見たことはないのですが、そのせいか漠然と変化に対して怖いと思ってしまいます。永遠普遍のものはない、いつだって世界は時代や社会に応じて変化を続けてきた、そうわかっていても無償に変化を恐れてしまう私は保守派の人間だと思いました。

 世界的に大きな変化でなくても、例えば私たちの将来に大きく関わってくるこれからの英語教育の変革についても同様です。翻訳の点で言うと、人工知能の存在や、言語という観点から言うとグローバル言語としての英語の存在、これらがこれから変化する中で決して今と同じ状況ではいられなくなる英語教師はどうすればいいのか、頭を柔らかくして考えなければならないと思いました。

 その中で、前回紹介してくださった単一ループ学習、二重ループ学習のお話から前提を問い直すことという考え方が非常に印象に残りました。グローバリゼーション、異文化理解においては今縛られていることから自分を解放することはきわめて重要だと思います。また、大きく考えなくても自分が生きるうえでプラスになる考え方だと思いました。


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変化がますます激しくなることが予測されるこれからの時代を生きる若い世代を育てるために、私たち大学教員も常に自分の前提を問い直しながら教育・研究を行う必要性を再認識した次第です。




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