2016/08/22

INU学生セミナーにFA(Facilitator Assistant)として参加した学部4年生M君の感想


以前にもこの広大教英ブログに記事を掲載したことがある学部4年生のM君が、INU (International Network of Universities) に参加した感想を寄せてくれました(M君、ありがとう)。

この経験を通じてM君は、「英語がぺらぺら話せる人間ではなく、中身のある英語を話すことができるように」なりたいと願い続けていたものの、まだ自分の学びは十分でなく「自分の専攻だけに知識を集中させるような学び方を続けると、それもつまらない人間になってしまう道なのかもしれない」とも考えました。

「言葉や文化を共有しない他者同士の出会いのなかで、英語を使って分かり合おうとするために必要なことばの力」を目指す英語教育について考えなおそうと改めて決意したM君の感想から皆さんも何かを学び取っていただけたらと思います。






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8月4日から12日まで行われたINU (International Network of Universities) による学生セミナーに、通訳兼アシスタントとして参加してきましたので、そこでの体験について報告させてください。

 INU学生セミナーは、海外の学生が広島に集まり、ディスカッションやワークショップ等を通じて”Global Citizenship”について考え、討議するというセミナーです。毎年異なるテーマでセミナーが進行するのですが、今回は「グローバルな文脈における先住民族の権利」というテーマで講義を受けたりディスカッションを行いながら、最終的には「模擬国連」の場で、各国の外交官グループに割り振られた参加者たちが、自分の担当する国の利益を最大化するために他国と交渉しながら、打ち出された決議案を修正する議論を行いました。今年は11か国、13大学から100名を超える学生と教職員が参加しました。

 国際法や国際政治学を専攻し、英語も流暢に話すことができる海外の学生が多い一方、広島大学からは英語能力や専攻によって参加者を制限していないため、日本人大学生は取り扱うトピックへの知識も英語能力も不安な状況で参加しています。そのため私のようなアシスタントが必要だったのですが、私自身もアシスタントという立場でありながらきちんと仕事をこなすことができない場面が多くありました。九日間、英語を用いて海外の大学生たちとアカデミックな交流をした体験として、特に強く感じたことや考えたことについていくつか報告したいと思います。


1. 中身のある英語を話すということ

 これは一番驚いたことなのですが、セミナー中に出会った大学生たちのほぼ全員から、「君は何を専攻しているのか」と聞かれる経験をしました。それも、「英語教育学を専攻している」という情報だけではなく、具体的にそれはどういった学問でどういったことを問題にしているのか、そしてあなたはその中で特に何に関心を持っているのか、まで多くの場合掘り下げられます。日本で初対面の大学生と出会っても、「教育学部です」程度の話で終わることが多いため、深く掘り下げた情報を伝えることが難しく、これには最初、とてもつらい思いをしました。

 英語がぺらぺら話せる人間ではなく、中身のある英語を話すことができるようにというつもりで大学では勉強をしてきたつもりだったのですが、まだまだ足りなかったと反省しています。

 海外の参加者に専攻している学問について質問すると、例えば「国際政治学を専攻していてね、」に始まりその学問の内容、自分が刺激的だと思っている事柄について延々と話を聞かせてもらうことができるけれど、果たして自分は同じように語ることができるのか、それはもしかして日本語であっても難しいことではないのか、と考えると、悔しい気持ちでいっぱいです。

 専攻分野だけに限らず、母語以外のことばを通してでも、語るべき自己を語ることができるようにならなければならないという思いを、実際の体験を経て強く持つようになりました。


 2. 知識は開かれている(いた)

 専攻としている英語教育学とかかわりの薄い政治学、法学を学ぶことを通して、改めて学問は、知識はこんなに開かれているのになぜ知ろうとしていないのだろうと感じました。

 セミナーの事前課題として多くの読書課題を課されたり、セミナー中必要に駆られて読んだ資料は、これまで学んできたことからかけ離れていて難しくもあり、刺激的でもありました。例えば「オーストラリアにおけるアボリジニの人権」、「インドの先住民、adivasiの現状」、「琉球民族とアイヌ民族の人権」など、なぜこんなに大事なことを今まで知らなかったのだろうかと読みながら気づかされることが多くありました。知らないことは膨大にあるし、知らないことに気づいてもいない、そしてその知識は、多くの場合誰にでも開かれているものだなということを改めて感じました。また、英語を使うことだけを勉強していても内容の薄いことしか話せないのと同様に、自分の専攻だけに知識を集中させるような学び方を続けると、それもつまらない人間になってしまう道なのかもしれないなと考えました。

 今回学んだ内容はたまたま先住民族の人権についてでしたが、どんなものであっても構わないから専門領域以外のことをもっと楽しみながら学べると、これからの人生がより豊かになるだろうと思っています。

 好奇心は燃えるがままに任せて、どんなことも学べる、学びたい、と思うような、そういったかアカデミックなしたたかさを持ち続けたいと思います。


3. 最後に

 以上二つが特に強く感じたことです。最後に伝えたいのは、セミナーでの公用語が英語だったことの感動についてです。世界中の異なる文化、言語、感じ方や考え方をもつ学生たちがこの広島に集まり、平和祈念式典に参加し、世界中の先住民族の人権について学び、議論し、日程の最後には労をねぎらい別れを惜しんだ時、私たち全員が使っていたのは英語です。言語、文化、学問的にほとんどバラバラといっていい人間たちが、英語という共通のことばを使って豊かに交流する様子を今振り返ると、とても美しいと思います。

 英語教育の目的は、子どもにこういった体験ができるように、この体験に感動できるようにさせてあげることなのかもしれないなと考えるようになりました。言葉や文化を共有しない他者同士の出会いのなかで、英語を使って分かり合おうとするために必要なことばの力、そしてその体験を通して子どもに新たな何かをひらくことができるような英語教育は、いかにして可能なのかという問いを持って、今後の学びへ生かしていこうと思っています。



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広大教英では志をもって学ぼうとする人を求めています。
ぜひ一緒に英語教育の改善・改革のために学びましょう!

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