2018/08/29

英国エディンバラ大学での4ヶ月語学留学プログラムを振り返って


広大教英では1991年より英国エディンバラ大学での語学留学プログラムを実行していますが、この度、そのプログラムから帰ってきたばかりのM君(学部2年生)に留学を振り返った文章を寄稿してもらいました。(M君、お疲れのところをありがとうございました)。
信頼できる環境で確実に英語と異文化交流を学びたい方はぜひこのプログラムをご活用ください。

広大教英HP:留学制度


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(お気に入りのPortbello Beachから見た夕日)


今年度4月から7月までの約4ヶ月間、英国スコットランドの首都エディンバラに留学してきました。エディンバラで学びたい理由はとても明確で、「自分を試したい」という強い思いでした。以下の文章は主に3つの観点から貴重な海外経験を振り返り、学んだこと・気づいたことを整理したものです。拙い文章ではありますが、これを読んでくださった方が少しでも海外留学に興味を持っていただけたら幸いですし、挑戦するきっかけとなることを願っています。


1. 英語力

 正直なところ留学に行く前は、「自分の力はどの程度(レベル)なのか」について何度も考え直し、4ヶ月後の自分を思い描けず不安を感じていました。目標は予め決めていたものの、具体的な手段を思い浮かばないまま日本を発ちました。

 自分なりに分析しますと、確実に聞く(listening)と書く(writing)分野において顕著な進歩が見られたと感じています。まず聞く力に関してですが、徹底してPodcastというアプリケーションを用いてBBCのラジオなどで英語を聞くことを習慣づけました。行き帰りのバスの中や入浴時、合間時間を有効に無駄なく使うことを心がけました。さらに聞き流すだけでなくディクテーション等の方法で英語を再生するなどの工夫を凝らしました。結果として、ミュージカルのセリフや飛行機内アナウンスの英語の内容の理解速度が上がるなどの成果を見出すことができました。

 次に書く力について、私は継続的な日記(journal)とEAP(English for Academic Purposes)という授業を通して自分のライティングを見直すことができ、その違いに驚きました。現地の先生から生活の中で感じたこと・学んだこと・気づいたことを日記に残すよう指導され、見返す度当時の自分を振り返ることができました。さらに語彙や表現の、論理性を意識した構成など、授業で習ったことを(家庭)学習で実践する一連の流れに留意しました。(もちろんこれまでも行なっていましたが)内容のつながりに配慮することで読者を意識したまとまりのある文章を英語で書くことがさほど苦にならなくなりました。


2. 学びの環境

 留学の醍醐味と言えばやはり“生きている”英語を学べる点ではないでしょうか。少し強い表現をしましたが、私は英語が実際に使われている状況を把握できる場面が豊富にあるということを意図しています。スーパーやレストラン、バスなどの交通機関はもちろん街中身の回りのあらゆるものから英語を学べる、そんな恵まれた場所での英語学習は価値あるものでした。またネイティブの人々が何気なく使用するイディオムやインフォーマルな表現なども全て含み、私が尊敬するフランス語の先生のお言葉を拝借しますと、教科書の中で「飼育」されているだけの英語と「放し飼い」の英語との差異を実感することができました。


3. 思いやりに溢れる現地の人々

 留学を通して達成したい最大の目標は、「現地の人々との個人的なつながりを作る」ということでした。前年度同じ留学プログラムに参加した先輩から頂いた、自分で“行動を起こす”ことが重要だというアドバイスを心に留めました。自分から積極的に授業の先生やhostと会話を設けることで距離を縮めることに成功しました。また、hostのお姉さんの家族にも会うことができ、小さな子に英語で読み聞かせする、ビーチで遊ぶなど、貴重な時間を共有することができました。

 異なる価値観や文化的背景を備えるネイティブと英語で様々なトピックに関して議論するのは容易なことではありませんが、互いに理解し合えた時の達成感・充実感は筆舌に尽くしがたいものです。さらに私が英語学習者であることを知りながら、ネイティブは「手加減をしないでくれた」こと、随所で感じた「分からなくて悔しい」、「伝わらなくて悔しい」という気持ちがさらなるモチベーションに繋がっていたと実感しています。何よりも、私が出会った人は全員優しさに満ちており、この出会いは生涯をかけて自分の中に生き続けると確信しています。

 留学に来ることがすごい!とか、海外で学んだからすごい!とか、私はそういう風には全く思いません。ですが、自分の五感を通し、誠心誠意向き合い努力して得たこの経験はどんなものにも変えることはできないし、今の自分と留学前の自分は明らかに違うと私は知っています。だからこそ、日本でも様々なことにこの4ヶ月間の財産を活かしたいし、いつの日かエディンバラに再び戻りたいです。

 私に携わっていただいた、素晴らしい関係を築くことができた全ての方々に感謝を申し上げ、振り返りを終わりたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

2018/08/03

広大教英生の教員志望者の87%が、卒業後すぐに教員正採用!(2018年データ)


今年は8/21(火)と22(水)に、広島大学の魅力を受験生に知らせるオープンキャンパスが開催されます。


広島大学オープンキャンパス2018

広島大学オープンキャンパス2018デジタルパンフレット


「広大教英」のプログラムは教育学部K108講義室で、両日ともに2回に分けて行われます(12:00-13:20と13:40-15:00)。

教育学部プログラム

教育学部周辺地図(広島大学作成)

教育学部 (Google Maps)


今年担当する教員は、樫葉みつ子先生(両日)と松浦伸和先生(8/22のみ)です。教英の学生さん(学部生・院生)も二日間で6名参加し、広大教英のよさを学生さんの声でお伝えします。

管理人はその準備資料を作っていたのですが、改めて今年の3月に卒業した学部生の資料をまとめてみると、広大教英生の教員志望者の87% (15名中13名)が、卒業後すぐに正採用の教員として働いていることが確認できました。




2010-2018年のデータを見ましても、平均で66%の割合で卒業後すぐに正採用教員として働いていますが、その中でも今年卒業した教英生は一番の「一発合格」率を示しました。
これはどこに出しても恥ずかしくない数字だと思っています。



もちろんこういった数字だけが大切なのではなく、もっと大切なのは卒業後の教英生がそれぞれの場所で幸せな人生を送ることです。

広大教英としては、こういった数字を気にしながらも、大学教育の本質を大切にした教育活動をしようと思っています。

広大教英にご興味のある高校生・浪人生はぜひオープンキャンパスにお越しください。

広島大学は文字通り「広大」ですので、初めて来る方はどうぞ上の地図で場所をご確認ください。


ただ、残念ながら現在、まだJR山陽本線はまだ完全復旧していません。広島大学へのアクセスの最新情報は、以下のページなどでご確認ください。


広島大学への交通アクセス










2018/07/25

胡子美由紀先生が『中学英語 生徒がどんどん話せるようになる!即興スピーキング活動』を学陽書房から出版されました



広大教英の卒業生の中でももっとも輝いている教師の一人である胡子美由紀先生が、この度3冊目の単著となる著書『中学英語 生徒がどんどん話せるようになる!即興スピーキング活動』を学陽書房から出版されました。




学陽書房ホームページ
『中学英語 生徒がどんどん話せるようになる!即興スピーキング活動』
(「立ち読み」ページと資料ダウンロードページあり)
http://www.gakuyo.co.jp/book/b370547.html



この本は「生徒が即興で英語を話せるようになる工夫」や「英語で話したいという気持ちを引き出すコツ」をまとめたものです。

第一章では信頼関係、タイムマネジメント、指示の出し方など授業の前提となることをまとめます。第二章では心理的距離を縮める机配置、ウォームアップの仕方、授業の目標の確認などスピーキング指導のみならず学級経営や集団づくりにも役立つコツを紹介しています。第三章は、Chants, Bingo, Skit, Chatなど9つのスピーキング活動の行い方をとても具体的に示してくれています。第四章ではさらなる発展編としてStudent teacher, Topic speech, Discussion, One minute monologueなどの技能を統合し子どもの底力を伸ばすための9つの言語活動のやり方をこれまた丁寧に示してくれています。

胡子先生の著書のいい所は、ご自身のさまざまな経験に裏付けられた具体的な活動を非常にわかりやすい形で示すだけでなく、それらの活動の根本となっている原理・原則を明確に言語化しているところです。この本も一読し常時参照しているうちに、英語教師の発想と行動の幅が広がり奥行が深まる好著です。

胡子先生のように探究的に英語教育実践を積み重ね、生徒にしっかりした英語力をつけることによって生徒が自らの人生に向かい合うことを勇気づけている教師こそ日本の宝だと私は思っています(およそ教育こそ国の基本を作るものだと私は思っています)。
英語教育を豊かにするリソースの一冊としてお薦めです。


この記事を掲載する前に、上の文章について胡子先生に連絡をとった際に、胡子先生に、短いメッセージをお願いしたら、お忙しい中にもかかわらずご快諾いただきました。
以下が胡子先生から皆さんへのメッセージです。

どんな子どもたちも、英語を自在に使いこなし、他者と豊かにコミュニケーションをとりたいと思っています。英語という言葉を通じ、どの教科よりも夢を与え、学びの楽しさを伝えることができる。それが英語教師の醍醐味だと思っています。本書が、現場の先生方や英語教師を目指す学生の皆さんの「元気」のもとになり、子どもたちを笑顔にするお役に立つことができれば幸いです。
胡子美由紀


「どんな子どもたちも」ということばが深いと思います。かく言う私も、しばしばこのことばを忘れそうになってしまいます。公教育に携わる者として自戒せねばと思います。




2018/07/24

中尾佳行先生が渓水社より『 チョーサーの言語と認知』をご出版されました


この度、福山大学教授・広島大学名誉教授の中尾佳行先生が、渓水社より『 チョーサーの言語と認知 「トパス卿の話」の言語とスキーマの多次元的構造』を出版なさいました。




渓水社ホームページ
『 チョーサーの言語と認知 「トパス卿の話」の言語とスキーマの多次元的構造』
http://www.keisui.co.jp/cgi/isbn.php?isbn=ISBN978-4-86327-439-6


広島大学をご退職されても変わらず学問の道を歩み続ける中尾先生の姿に、私たち後輩は大いに刺激を受けています。

そんな中尾先生に、この広大教英ブログに短い文章を書いていただけませんかとお願いすると、快く引き受けてくださいました。原稿は実は7月13日にいただいていたのですが、管理人がバタバタしており、掲載が本日にまで遅れてしまいました。遅れをお詫び申し上げます。

ともあれ、中尾先生からのメッセージです。私たちも勉強を続けましょう!




 
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 2016年3月に定年退職しました中尾佳行です。在職中皆様には大変お世話になりました。有難うございました。

 この度の豪雨で三原市も東広島市同様に多大な被害を受けましたが、私の家は少し高台にあり、大丈夫でした。妹夫婦宅も大丈夫でしたが、断水の関係で、時間をかけて我が家に水を汲みにきては、洗濯、風呂と大変な状況です。

 さて、この度『チョーサーの言語と認知』(渓水社、2018)を上梓しました。認知言語学のスキーマ形成理論を援用して、チョーサーの言語の意味の構造化を試みました。本書では2016年7月ロンドン大学、The New Chaucer Societyでの発表を発展させました。「前書き」の一部を紹介します。「チョーサーのテクストを読んでいて、テクストの意味はあるのではなく生まれてくるものだと、感じてきた。辞書で検索し、文法で固定し、文脈を考慮し、一つの意味に絞ったとしても、次の日に読み直してみると、意味が微妙にずれていく。実際にそれはcruxの一つとなって研究者間で物議を醸すこともある。チョーサーの言語の遊び心とも言うべきか、言語のゆとりないし柔軟性に魅力を感じてきた。この問題意識はチョーサーの言語の意味を構造化してみたいという思いに発展していった。」

 今、カナダ、トロントでのThe New Chaucer Societyに参加しています。チョーサーの認知の動きと「語り」の問題(Narratology)に関心を持っています。簡単に言えば、自由間接話法を含むチョーサーの話法の弾性(plasticity)を認知的に、また語り論的に深めてみたいと思っています。

  写真は、トロント大学Victoria Collegeのキャンパス内、カナダの文芸批評家Northrop Frye (1912-1991)の銅像の横で、友人のフランスの学者Jonathan Fruoco氏と一緒に写ったものです。Jonathanは、バフチンを活用した”polyphony”の研究者です。彼と一緒に中世と現代を繋ぐポリフォニーの論文集を作成する予定です。




2018/07/20

第二回英語教育小論文コンテスト(10代・20代が考える英語テストのあり方)の最優秀賞は19歳の清水一生さんです!



第二回英語教育小論文コンテスト(「10代・20代が考える英語テストのあり方」)の最優秀賞は19歳の清水一生さんに決定しました。清水さんには賞状と賞品(図書カード1万円分)をお送りします。また、延期された広島大学英語教育学会のシンポジウムには清水さんのご都合さえつけばご招待させていただこうと思っております。

以下に審査員コメントと清水さんの作品を掲載します。作品は縦書き原稿用紙に手書きされたものを、ワープロに変換する際に一部の漢数字をアラビア数字に換えた以外は原文のままです。


審査員コメント

 清水さんは、これまで定期的に英語資格試験を受けてきましたが、年々成績は上がっているにも関わらず、自分の英語力の伸びを今一つ実感できないままであると訴えています。また、まわりの英語学習者も同様で、英語資格試験の成績向上によってプライドばかりが高くなり、かえって真の英語力向上が妨げられているのでは、と逆説的な論を展開しています。そこで清水さんは、「現在の日本における英語資格試験は全て廃止すべきである」という大胆な案を提示しつつ、代わりにグローバル社会により相応しい英語資格試験の導入を唱えています。特にスピーキング力を測るこれまでの面接試験は「あまりにも形式的」であるとし、これからの時代で求められるスピーキング力に即した面接試験の開発が喫緊の課題であると指摘しています。個人的な体験に基づきつつも、大胆で刺激的な論が展開されており、最優秀賞に値すると判断しました。




作品

我々を映し出す試験という鏡

清水一生(19歳)

英検、GTEC、TOEICにIELTSと今日では様々な英語資格試験にあふれている。身の回りでは「グローバル化」といった言葉や「英語が必要な世の中」などといった声が後を絶たない。そんな中、果たして本当にこれら資格試験は「グローバル社会」を生き抜く人材を育成しているのだろうか。

 私が初めて英検を受験したのは中学二年の頃である。当時の私は英語がこの上なく好きで、かなりの情熱を注いだのを覚えている。初めて受験した級は三級で、一次試験をパスし、二次試験の面接にも合格した。しかし、どこか満足感や達成感がなかった。面接試験があまりにも形式的で試験官とのやりとりが機械的すぎると感じたためだった。このような試験で受験者の能力を測ってよいのか、という疑問を隠せなかった。私は今冬で19歳になるが、あの当時からその疑問を抱いてきた。私が思うには、英検といった現在の資格試験を通して人々の英語の読み書きの能力は向上する可能性は大いにあるが、必ずしも英語を話す能力は上がるものではないということである。

 中学生の頃、ALT(外国語指導助手)である先生と英会話をする機会が何度もあった。しかし、彼らとの会話を楽しむことはもとより、自分の言いたいことを表現することさえ意のままにできなかった。残念なことにこの状況は高校卒業まで続き、今に至る。取得した英検のグレードは年々高くなってきているのにも関わらず。加えて、自分のようにペーパーテストのスコアは高いが、人と面と向かって会話となると、英語が途端に話せなくなり、戸惑い、ついには赤面するような人を今まで何人も見てきた。

 英語資格試験の面接においては、事前に策を練り、練習を重ね、本番では形式に従って機械的に受け答えをするだけという流れがここ数十年は繰り返されてきたように思える。反対に、英検の一次試験での「読む・書く・聞く」の能力を問う試験では、これら三要素が十分に育成されるため、受験者の力も向上する傾向にある。また、二次試験とは違って、試験制度も2016年を境に改変された。言うまでもなく、二次試験については変更されなかった。

 では、英検などの試験を通じて私達は何を測るのか。「私達が持つ総合的英語力」、「グローバル社会に対応するための英語力」。これらは無論、多くの人が答えるであろう内容である。しかし、どうだろうか。この先、社会はグローバル化するわけだが、その社会で必要となる英語力の根本を築くのは「話す力」だと私は思う。今、迫り来る社会では、仕事をするにも何かをするにも英語を話す力が求められる。まして、そんな社会で生き抜いていくにはなおさらである。このような観点から、現代の人々は英語検定試験を通じて、グローバル社会で‘本当に’必要な「話す力」が育成されず、正しく測られていない、と私は考える。

 興味深いデータがあるため、紹介したい。(注)かの有名なTOEFLテストに「話す」試験が導入されて以来、日本人の英語力がアジアで底辺という結果が出された。日本人と「話す力」の乏しさが露呈されたと言える。現代の日本では英語、英語と口うるさく言い、英語力向上のためにあらゆる計画を推し進めているにも関わらず、アジアで最底辺という現状だ。つまり、現在の英語教育制度では不十分であるということが分かる。

 私は提案する。現在の日本における英語資格試験は全て廃止すべきである、と。現在の試験制度では仮に「資格」を取得する人が多くなるとしても、彼らの多くにはプライドや「自分には資格相応の英語力がある」といった過剰な自信だけが備わってしまい、いざ社会に出ると、彼らの英語力は全く通用しない、歯が立たないものであると社会から痛烈な評価が下されることを私は危惧する。そして私もその一人となる過程を辿っているのかもしれない。このように主張しておいては何だが、解決策ないしは打開策を即座にはひらめき難いのも現実である。巷では、2020年の教育改革、大学入試制度の変革の方針も明確に示されている。人ではなく彼らを取り巻く環境を変えることも大切ではあるが、やはり教育者である英語教員にも変革を起こし、彼らに本当に必要とされる資質にも目を向けてほしいと願う。

 私は、教員を志す者の一人で、近い将来、教鞭をとり、目まぐるしく発展する社会で生きるのであろう。果たして、数年後の未来にはどんな世界が広がっているのであろうか。英語教育に大きな変革は訪れているのだろうか。はたまた、現状突破はされないでいるのか。様々な思いを巡らせながら、今日も私は歩み続ける。
(注)https://www.google.co.jp/amp/s/diamond.jp/articles/amp/96206







清水さんおめでとうございます。

清水さんのこの作品を一つの契機にして、よりよい英語教育づくりを目指してゆきたいと思います。

この英語教育小論文に直接的・間接的に関わってくださった皆様に心より御礼申し上げます。




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優秀賞(U-19部門とU-29部門)と審査員特別賞の発表(第二回英語教育小論文コンテスト)
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第二回英語教育小論文コンテストの奨励賞発表
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第2回英語教育小論文コンテスト -- 10代・20代の皆さん、英語テストのあり方についてご意見をください!
http://hirodaikyoei.blogspot.com/2018/04/2-1020.html






2018/07/19

優秀賞(U-19部門とU-29部門)と審査員特別賞の発表(第二回英語教育小論文コンテスト)



第二回英語教育小論文コンテスト(「10代・20代が考える英語テストのあり方」)について昨日の奨励賞発表に引き続き、本日は優秀賞(U-19部門とU-29部門)と審査員特別賞の発表をいたします。

以下に、受賞者のお名前と受賞作品に対する審査員のコメント、そして作品の一部を抜粋して掲載します(抜粋の際には、原文にあった注釈番号などは取り除いております)。

受賞者の皆様には後日、賞状と賞品(図書カード)をお送りいたします。

応募してくださった皆様に改めて感謝いたします。


追記(2018/07/20)
上記ポスターにおいて佐藤さんのお名前を間違って掲載しておりました。
お詫びして訂正します。



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U-19優秀賞
佐藤綾香さん


審査員コメント
 大学入試にも活用が議論されている「外部試験」について,スピーキング能力が含まれることへの意義を認めながらも,その課題を,経済面,地理面,情報面から論じ,国として何らかの施策を打つべきであることを訴えた論文です。高校生として,自身の目前のことでなく,より広い視野から現状を捉え,それに対して具体的な改善策を提案することで,「教育の機会均等」という守るべき根本を改めて考えさえてくれた良論文であり,U-19優秀賞に値すると判断しました。

作品からの抜粋 
私は、外部試験においての三つの問題点に直面していることに気づきました。それは、家庭環境や住んでいる場所、情報網の不足によって、有利・不利な面があるということです。
 一つ目は、経済面です。トーフルなどの外部試験は受験料が高く、受けることすら困難な人もいるということです。
(中略)
二つ目には地理面での問題があります。外部試験の多くの試験は県庁所在地等で行われるため、田舎に住んでいる私のような人は距離があって行くことが大変であるということです。私の住んでいる地域は市内から約百キロメートル離れていて、行くだけでさえ二時間ほどかかり、それに加え、もし電車で行くこととなれば往復三千円程かかります。
(中略)
三つ目には情報面を挙げたいと思います。大きな問題点として、まずこのような外部試験があることを知らない人が多いと思います。実際、私もトーフルといった名前は聞いたことはあったものの、英語の試験であることも知らず、実用英語技能検定以外に英語の試験があることも知りませんでした。色々なことを調べていくうちに様々な試験があることを知り、もっと早く知っておくべきだったなと思いました。
(中略)
このままの状態を続けていくと、お金に余裕がある人たちだけが伸びてゆき、条件が整っていない環境にない人は育っていくはずだった能力さえも失っていくような気がします。




U-29優秀賞
日浅彩子さん


審査員コメント
 本稿は,著者の英語教師としての経験・体験をもとに,昨今の英語教育改革,入試改革について論じ,特にスピーキングテスト導入について警鐘をならした論文です。まず,Literacy,Oracyの概念を紹介しながら,スピーキング能力が非常に複雑で言語外の要素にも大きく影響をされるものであると指摘しています。その上で著者の論は,これまでの入試をそのまま容認するという訳ではないものの,この複雑なスピーキング能力について十分な議論を行わないまま,そのテストを入試等に導入することで起こる不安定な波及効果に懸念を示しています。現役英語教師としての立場から現在の入試へのスピーキング能力測定導入に対して,我々に再考を促す優れた論文であり,U-29優秀賞に値すると判断しました。

作品からの抜粋
 英語外部試験に関して、成績提供システムに参入したものを見ても、それぞれの方向性が異なっており「四技能型であれば何でもよい」という風潮が否めない。特に大きく問題であるのは、録音式と対面式が混在しているということである。成績提供システムが基準としているCEFRでは、モノローグとダイアログの能力を別のものとしている。スピーチなど個人で完結するものと、インタビューなど相手とのやり取りの中でのスピーキング能力を分けているのである。このような点に関する議論も全く十分ではない。
(中略)
 大学入試改革は、コミュニカティブな能力を育成する英語教育を実践したい、と願う教員にとっては、その熱意を後押しするものであることは間違いない。しかし実際のところ、その波及効果は有意義なものとは言えず場当たり的な対応が横行しているように感じる。また実施をする中での問題点も山積みである。受験料負担など、家庭の経済的な事情によって受験機会が失われる可能性が大いにあることや、受験の機会に関しては地域差があることも問題だ。地方では、面接会場や面接官の確保そのものが困難であるようだ。その場所まで受験をしに行く受験生の費用面・体力面の負担もある。またoracyが場面に依存した能力である以上、言語外の能力が問われてしまうことに配慮することが不可欠である。場面緘黙症や発達障害、心身症などに起因するコミュニケーションが苦手な生徒に対する合理的な配慮というのはどこまで行われるのか。
 このように制度が十分整わない中、全面的に推し進めていくことは早急である。本論ではスピーキング能力について述べたが、「四技能型」と十把一絡げにしてしまうのではなく、「四技能型によって何を問うているのか」という試験の本質に対する議論が必要とされる。


審査員特別賞
出口確さん  

審査員コメント
 出口さんは昨年のU-29優秀賞に続く2年連続の受賞となりました。問題の所在を明らかにした上で、その問題をどのように解決すればよいかを文献等に基づきながら手堅く論じており、論文としての体裁は今回投稿された論文中でも秀でたものがあり、高い評価に値すると判断しました。ただ、今年の出口論文の真新しさは「単語テストの波及効果」への言及に留まっており、基本的には今年の主張も昨年のものと大きく変わるものではないと考え、審査員特別賞に留めることに致しました。

作品からの抜粋
 単語帳による語彙の暗記や、この形式の単語テストは、これまで多くの弊害が指摘されてきたが、依然として広く行われている。単語帳の暗記による単語テストには、なぜこれほど「人気」があるのだろうか。一つは、文法規則を学べば、あとは単語を当てはめると意味はわかる、あるいは文章は作れる、という考え方が暗黙裡にあることが考えられる。いま一つは、語彙は、英文を読み聴く中で出会って身につけるのが最善ではあるが、その方法で十分な時間がないため、単語帳を利用して効率よく学習するべきだ、という考え方によると考えられる。そしてもう一つは、指導者自身が、かつて単語テストによって語彙を身につけたと考え、これが有効だと信じているからだとも指摘されている。
指導者は、それぞれについてよく考え直してみるべきである。語彙の習得と努力が語学学習には不可欠だということは正しい。しかし、それがそのまま「丸暗記が必要」「訳語のテストが必要」ということにはならない。両者の必要性は誰にも否定できないし、口にするのは容易である。それ故に、訳語の丸暗記・テストの強制という、指導者の不作為の“隠れ蓑”となってはいないだろうか。また、指導者の語彙習得にとって、単語帳の暗記や単語テストは本当に有効だったのだろうか。単語帳の暗記により習得したと思える語彙は、実際には、単語帳以外の場で、運用に際して繰り返し接触した結果、定着したものなのではないか。指導者は、自らの指導法や考え方が正しいか、どのような学習者にたいして如何なる場面で適切かを、まずは“内省”し、検証することが求められる。
 一方、学習者自身が、語彙習得の重要性や、その方法について、正しく認識し知ることも必要であると考える。語彙習得は、一朝一夕にはなしえず、単語帳による訳語の暗記では不十分であることを学習者が明示的に知っておいたほうがよいだろう。これらを総じて、語彙学習に関する学習者の“方略”と呼びたい。(中略)
 「オール・イングリッシュ」や「アクティブ・ラーニング」という言葉の、英語教育における「流行」は、授業や指導法、学習法に何らかの影響を及ぼしたとしても、単語帳の丸暗記の強制や、単語帳に基づいて訳語を問う単語テストの実施を防ぐ効果はない。寧ろ、このような問題は、「流行」の中にあって着目されにくく、残存してしまうことも考えられる。学習者の学生時代の貴重な時間を浪費することがあってはならない。

最優秀賞は明日発表の予定です。作品の全文も掲載します。どうぞお楽しみに。






2018/07/18

第二回英語教育小論文コンテストの奨励賞発表


 先日お知らせしましたように7/22(日)に予定していた広島大学英語教育学会は開催を延期しましたが、第二回英語教育小論文コンテスト(「10代・20代が考える英語テストのあり方」)の発表はこのブログを通じて行います。最優秀賞受賞者は、学会を別日程で開催する際に改めてご招待させていただければと思っております。

 本日は奨励賞の発表です。以下に受賞者のお名前と、その作品に対する審査員コメントを掲載させていただきます。掲載は受賞者のお名前順(五十音順)です。その他の賞は明日以降発表いたします。

 改めてこのコンテストに関わってくださった皆様に感謝申し上げます。





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■ 有元温香さん

 有元温香さん(U-19部門)は、英語の定期テストの特徴は「習ったことしか出ないということ」と「問題文を読まなくても解けるということ」であると考えています。定期テストは表面的なテストになってしまっているので、有元さんは、定期テストで良い点数がとれても「身についた」という感覚はあまり得られない、と語ります。

 そのように考える有元さんが提案するのは、国際理解教育をテスト化することです。例えば、「アフリカの子どもの出生率を上げるには何をすれば良いか」という議題に対して考えて英語で解答するわけです。高校生が「大学合格」から「国際理解」へ意識を転換していくということが必要だと有元さんは主張します。

 とても大胆な発想で審査員の注目を引いた作品でした。ただ有元さんは「このテストは、理解度や創造力、実践力などの点から点数化する」と述べていますが、こういった項目はなかなか点数化しにくいものかとも思われます。このあたりをもっと詳細に論じてくれていたら上位の賞も不可能ではなかったと思います。


■ 宇都陽鳳さん

 15歳の宇都陽鳳さんは、日本の英語テスト問題には、実用的な英語の使い分け方を問う問題がほとんどないことを指摘します。例えば「How aboutとWhat aboutの使い分け方の説明」や「喧嘩をしたときに『あなたが悪い。』と言いたいときは、“You are bad.”と“It’s your fault.”ではどちらの方が適当なのか」などを考えさせるような問題です。宇都さんは、Assistant Language Teacher(ALT=外国人指導助手)がこのようなニュアンスの違いを学習者に問うテストを提唱します。

 しかし同時にこういったテストの普及は困難だとも考えています。一つの理由は多くの英語教師自体の英語経験が浅すぎること、もう一つの理由はALTがまだまだ日本の英語教育界で十分に活躍できていないことです。

 耳の痛い指摘です。英語教育関係者の中には、この二つの理由に対して反論をしたくなる者もいるでしょうが、日本の英語教育界全体を見ると、このように断じられても仕方がないことは英語教育関係者は素直に認めるべきでしょう。具体的な提案と率直な指摘を審査員は高く評価しました。



■ 垣内田杏珠さん

 高校3年生の垣内田杏珠さんは、テストの形式が学習全体に与える影響の大きさを踏まえた上で、二つのテスト問題を提案します。一つは、日常会話で頻繁に使用し、かつ日本独特の感性に基づく言葉、例えば、「こだわり」「初心」「もてなし」「つまらないもの」といった言葉をシンプルな英語で表すテストです。これらのことばは、日本語では理解しきちんと使い分けることができるものの、いざ英語で表現しようとすると相当に考えなければなりません。こういったことばを英語で表現するテストは、英語運用能力の向上につながるだろうと垣内田さんは考えます。

 もう一つは、多様な英文をSVO(主語 + 動詞 + 目的語)の三語で表現するテストです。これも一つ目のテスト同様、物事の本質を瞬時に掴み、それを簡潔に表現する能力が問われるものです。こういった暗記再生とはまったく異なる思考力と表現力を同時に鍛えるテストを学校教育に組み込むことが重要と垣内田さんは主張します。

 たしかに、授業の中にも入れられそうな活動です。もっと多くの英語教師がこのような発想をもってほしいと思わせる作品でした。


■ 土井孝太さん

 高校3年生の土井孝太さんは、英語力においては暗記再生能力よりも、「対話力」と「対応力」が重要であると述べます。土井さんは、自身の高校で受けている「長文の内容から社会問題を考え、自分の意見を英作文したり、内容に賛否したりと、徹底して思考力を伴うテストの問題」こそはそういった力を育んでいると考えています。土井さんの高校では文法問題にしても「場面設定の中で適切な使用を選択する問題や、状況に応じた文法を用いて自己表現を行うなど、暗記では到底敵わない内容」であると述べます。そしてこういった問題を解き終えた後は、「充実感や知的で心地よい疲労を感じ、また、テストを通して新たな教養を得ることができた」と述懐しています。

 審査員も、「どんなテストだろう」と好奇心をそそられました。「いい英語教育を受けているなぁ」とも思いました。それだけに、もう少し具体的に土井さんが受けているテスト問題についてもう少し具体的な記述があれば、読者にもヒントが与えられるのにと思わざるを得ませんでした。また、パラグラフ・ライティングの原則にしたがって、「一つのパラグラフには一つの主張(だけ)」を徹底するともっと説得力のある小論文になったのにとも思います。今後に期待したいと思います。


■ 丸山知沙さん

 大学生の丸山知沙さんは昨年度に続いての受賞です。丸山さんの素晴らしさはその文章表現の鋭さです。冒頭段落を引用します。「学校現場で行われているテストは、生徒たちの人格を否定するテストばかりだ。テストの点数が良いから優秀な子。逆にテストの点数が悪いと劣等生。テストの点数だけで生徒たちの人格を決めがちな色眼鏡をかけた教師たち。テストとは、生徒たちがどれだけ勉強に取り組めたのかを判断するためのものなのに、いつの間にかテストの点数で生徒の人格を判断するものになっている。テストの点数がその子の価値の評価になっている。それが本来のテストの姿なのか、私は疑問である」。問題を告発するためにはこのような文体も有効なのかもしれません。

 丸山さんは論を進める過程ででも、「他人からの評価ばかりを気にしていたら自分の心が死んでしまう。「他人の評価を気にする」とは、他人にばかり目を向け、本来の自分自身とは向き合わない行為だからである」といった印象あることばを紡ぎ出し、最後には、子どもに「自分で考え、答えを導き出すという行為が大切であるということこそが真の教師の役割であると論を結んでいます。

 読んでいて「ぐっ」とくる小論文でした。丸山さんの英語のテストについての具体的な考えが書かれていたらもっと説得力がましたのではないかと思います。


■ 森太紀さん

 18歳の森太紀さんの提案は大胆です。スピーキングやリスニングのテストに、近年開発が進んでいるヴァーチャル・リアリティの技術を利用するというものです。「そんなの無理、無理」という声が聞こえてきそうです。たしかにこれを全国一斉にやることは現時点では非現実的でしょう。しかし、この技術はゲームや医療訓練の分野などで現在既に使われています。未来を考えると、このくらい大胆に発想することは重要なのではないでしょうか。

 しかし森さんの提案はたんに大胆なだけではありません。森さんは、現状のリスニング試験が聴覚のみに頼っているという点で実は非常に不自然であることを指摘しています。現実世界の中のリスニングは、視覚情報も活かしながら行うものです。また、現在のリスニング試験のように一方向的に情報が与えられるだけのものでもありません。私たちは少しの情報を得ると、それを手がかりに反応し、その反応からさらに相手から情報が与えられるというのが現実の言語使用です。その点、ヴァーチャル・リアリティの技術でしたら、全方位撮影の動画を使って、あたかも実際に相手と対応しているような形でリスニングとスピーキングの両方の力を評価することができます。森さんの提案は、そこまで考えた上でのものです。

 このように本質をついた大胆な発想ができる森さんの将来に期待します。


■ 𠮷岡和登さん

 高校3年生の𠮷岡和登さんは、今日行われているリスニングとスピーキングのテストは、どちらも一方的でまともなディスコースになっていないと指摘します。言うまでもなく、コミュニケーションは、意思を一方的に伝えることではなく、相互が意思疎通を図り合うことです。したがって、ただ「聞く」やただ質問に応答し「話す」だけで終わってしまってはいけないと𠮷岡さんは説きます。

 しかし、多くの英語教育関係者は「客観的」な採点を求めるあまり、上記のような定型的なテストをやりがちです。それに対して𠮷岡さんは、試験官の質問にテスト受験者が答えて一つの質問が終わるのではなく、そのあとに試験官が簡単な質問を二、三回行うことによって、テスト受験者の思考力、対応力や柔軟性を測ることができると主張します。

 とても大切な指摘です。これからスピーキングのテストがどんどん普及するにつれ、この𠮷岡さんの指摘の重要性はますます高まるでしょう。テスト対策を徹底することで、思考力・対応力・柔軟性を育てる機会が失われてしまうという本末転倒が生じないように英語教育関係者は注意する必要があります。𠮷岡さん、大切な指摘をありがとうございました。

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 奨励賞は以上の7名です。皆さんから頂いたご意見を、これからの英語教育改善につなげたいと思います。すばらしい作品をお送りいただきありがとうございました。



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