この度、福山大学教授・広島大学名誉教授の中尾佳行先生が、渓水社より『 チョーサーの言語と認知 「トパス卿の話」の言語とスキーマの多次元的構造』を出版なさいました。
渓水社ホームページ
『 チョーサーの言語と認知 「トパス卿の話」の言語とスキーマの多次元的構造』
http://www.keisui.co.jp/cgi/isbn.php?isbn=ISBN978-4-86327-439-6
『 チョーサーの言語と認知 「トパス卿の話」の言語とスキーマの多次元的構造』
http://www.keisui.co.jp/cgi/isbn.php?isbn=ISBN978-4-86327-439-6
広島大学をご退職されても変わらず学問の道を歩み続ける中尾先生の姿に、私たち後輩は大いに刺激を受けています。
そんな中尾先生に、この広大教英ブログに短い文章を書いていただけませんかとお願いすると、快く引き受けてくださいました。原稿は実は7月13日にいただいていたのですが、管理人がバタバタしており、掲載が本日にまで遅れてしまいました。遅れをお詫び申し上げます。
ともあれ、中尾先生からのメッセージです。私たちも勉強を続けましょう!
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2016年3月に定年退職しました中尾佳行です。在職中皆様には大変お世話になりました。有難うございました。
この度の豪雨で三原市も東広島市同様に多大な被害を受けましたが、私の家は少し高台にあり、大丈夫でした。妹夫婦宅も大丈夫でしたが、断水の関係で、時間をかけて我が家に水を汲みにきては、洗濯、風呂と大変な状況です。
さて、この度『チョーサーの言語と認知』(渓水社、2018)を上梓しました。認知言語学のスキーマ形成理論を援用して、チョーサーの言語の意味の構造化を試みました。本書では2016年7月ロンドン大学、The New Chaucer Societyでの発表を発展させました。「前書き」の一部を紹介します。「チョーサーのテクストを読んでいて、テクストの意味はあるのではなく生まれてくるものだと、感じてきた。辞書で検索し、文法で固定し、文脈を考慮し、一つの意味に絞ったとしても、次の日に読み直してみると、意味が微妙にずれていく。実際にそれはcruxの一つとなって研究者間で物議を醸すこともある。チョーサーの言語の遊び心とも言うべきか、言語のゆとりないし柔軟性に魅力を感じてきた。この問題意識はチョーサーの言語の意味を構造化してみたいという思いに発展していった。」
今、カナダ、トロントでのThe New Chaucer Societyに参加しています。チョーサーの認知の動きと「語り」の問題(Narratology)に関心を持っています。簡単に言えば、自由間接話法を含むチョーサーの話法の弾性(plasticity)を認知的に、また語り論的に深めてみたいと思っています。
写真は、トロント大学Victoria Collegeのキャンパス内、カナダの文芸批評家Northrop Frye (1912-1991)の銅像の横で、友人のフランスの学者Jonathan Fruoco氏と一緒に写ったものです。Jonathanは、バフチンを活用した”polyphony”の研究者です。彼と一緒に中世と現代を繋ぐポリフォニーの論文集を作成する予定です。
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