2015年度後期から始めました昼休みの自主的読書運動である「昼読」を今期も継続します。
方針は基本的に前期と同じです。以下は「昼読」の基本理念です。
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あなたが使うことば ― これがあなたの人格を形成します。
あなたの人間関係も、あなたが生きる社会も形成します。
ことばを豊かに丁寧に使うことによって、あなたの平安がもたらされます。あなたの仲間の平安も、あなたの社会の平安も。
粗雑で無思慮なことばは、あなたをかき乱してしまいます。あなたの仲間も、あなたの社会も。
「昼読」とは昼休みに集まって、それぞれが持ってきた本を静かに読む時間を共有する場です。少々行儀は悪いですが、お昼ごはんを食べながら本を読んでもかまいません。読書の文化を根づかせるために行っています。広大の構成員(学生・教職員)なら誰でも歓迎します。
授業期間中の月・水・金の昼休みに行います(ただし初回は10/3とします)。一応12:05-12:45という時間帯を設定しますが、皆さんぞれの都合があるでしょうから、遅刻や早退はまったく問題ありません。場所は教育学部のA棟2階のA212(英語教育学演習室。英語教育学図書室の隣)です。
日本語で書かれた純文学や娯楽小説、あるいはノンフィクションや自然科学の啓蒙書、はてまた新聞でもかまいません。英語ならGraded Readersでも普通のペーパーバックでもかまいません。第二外国語の読本や参考書・問題集も歓迎します(第二外国語の習得はなかなか進まないものですから、第二(あるいは第三・第四・・・)外国語の場合は、自発的に選んだ参考書や問題集を読むことも認めることにしましょう)
ただし自由な読書文化を促進させるための試みですので、必要に迫られての授業の予習などは歓迎しません。あくまで自主的・自発的に選んだ本をもってきてください。
昼読の最後の五分では、その日の読書の感想を周りの人と共有します。その語り合いで私たちの世界が広がることを期待しています。
書物のことばは、(質の悪い例外を除けば)練りに練られたものです。SNSなどで刹那的あるいは衝動的なことば遣いが横行する現在、読書文化を守り、育ててゆきましょう。読書で培われた思慮深いことば遣いこそが近代社会の基礎となると私は信じて疑いません。
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この記事掲載に伴い、前期に熱心に昼読に参加してくれて、ハリー・ポッターの第一巻をフランス語で完読した学部4年生のM君の振り返りを掲載します。この振り返りは8月5日に完成していたものですが、私が、ドイツ語暗唱を続けてくれた学部3年生Tさんの感想と併せてブログ掲載しようと欲張っていたので、掲載が今日まで遅れました(Tさんは現在ドイツの大学に留学しています)。
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“Harry”を「アリー」と読む言語での読書体験
2016年8月5日学部4年 MY
今からちょうど2年前、私はパリの中心部から少し離れた通りの、ある書店にいました。数か月間のイギリス留学を終えて、帰国前に友人とフランスに寄って観光しようということで、数日間ですがパリに滞在していました。街を散策中、留学前からフランスで購入したいと考えていた書籍があったため、いくつか書店を覗きながら歩き、お目当ての本を見つけました。 Harry Potter a L’ecole Des Sorciers-言わずと知れたベストセラー、『ハリー・ポッターと賢者の石』のフランス語翻訳版でした。
一年生のころに第二外国語の授業でフランス語に触れ、興味を抱いたため独学ながら今も学習を進めていますが、パリに滞在した当時はまだフランス語歴(?)も一年ほどで、もちろんハリー・ポッターをフランス語で読める仏語力は全くありませんでした。知っていたことといえば、 “Harry”をフランス語で発音すると、 “h”の音がもともと発音されないため、「アリー」となってしまうことくらいでした(笑)。映画を見ていたこと、そして英語の原文で読んでいた経験はあったものの、それでは太刀打ちできない言語の壁を感じました。実際、半ばお土産として、フランスに来た記念として買ったようなところがあり、案の定帰国後は部屋の本棚にオブジェとしておかれることに。しかし、買っただけで読まないのはやはりもったいないという思いがあり、何とかこの本をフランス語で読むために学習を続けました。
それから一年半ほどたって、私は教英で柳瀬先生と大学院生の方が主催している読書会(「昼読」)に参加させていただくようになりました。各人が読みたい本をなんでも持ち寄って読もうということでしたので、私は前々から読みたかったハリー・ポッターの仏語版にチャレンジしてみることにしました。柳瀬先生や大学院生の方がドイツ語の本を読まれていましたので、自分も変な対抗心を燃やし(笑)、何とか読んでやろうと、辞書を片手に読書会に通いました。
最初は1ページ読むのに何十分もかかったりと、かなりゆっくりとしたペースで読んでいました。ただでさえフランス語ということで知らない単語だらけでしたし、加えてハリー・ポッターならではの、魔法使いの世界に関連する語句が多く見られました。1ページに何度も何度も辞書を引くこともありました。しかし、そのようにして読んでいく中で、徐々に読む速度も上がり、時には英語の原文との比較にも注目できるようになりました。「フランス語で読んでるぞ」という(良い意味で)妙な高揚感がモチベーションにもなり、エンディングまで読みきることを目標に、読書会への参加を続けました。
そうしたフランス語との格闘を続けることさらに半年、先月末にようやく『賢者の石』をフランス語で読み切ることができました。もちろん、細かい文法の用法や文学的な工夫などを理解するためにはまだまだ勉強不足です。しかし、一冊の作品をフランス語で読む、という体験は目で見て分かる証拠として、私の今までの学習を保証してくれている気がします。もともと物語を読むことが大好きで、このこともモチベーション維持に一役買ってくれました。はじめて読んだフランス語書籍が、自分の好きなハリー・ポッターで良かったと思っています。
また、英語教育を専門として学んでいることとの関連でも少し発見がありました。英語教育の現場には、私のようにある程度英語が得意だったり、得意とまではいかなくても英語が好きである、といった生徒さんばかりがいるわけではありません。また、英語を学びたての頃は誰しも、単語を一つ覚えるにも時間がかかるものです。しかし、今英語教育を専門に大学で学んでいると、そうした学び初めの頃の記憶、苦労して学んだ記憶が薄れてしまっているように感じます。それは私だけでなく、クラスメートの学生、さらには先生方にもやはり共通することだと思います。もともと英語が苦手だったのが後に好きになったという人も中にはいますが、そうでない人がほとんどです。
こうした記憶を忘れさらないためには、学習者の気持ちが分かるようになるためにはどうしたら良いのでしょうか。その一つの方法として、私は第二外国語学習があると考えています。もちろん、語学学習が好きという点は学習に有利に働きますが、学習の初期段階ではスタートラインは同じはずです。第二外国語のあいさつを覚えたり、自己紹介したりすることを覚えるはずです。そのプロセス自体は第一外国語でも第二外国語でも大きくは変わらないでしょう。そうした学習経験を再体験するためにも、第二外国語学習は非常に重要です。私は学生ということもあり、専門分野の他に第二外国語を学ぶための時間もたっぷりあると感じています。大学にいるときにできることをしておきたいですね。
「第二外国語」というと、「でもやっぱり今は英語の時代」と思われる方もいるかもしれません。しかし、英語も他の外国語も同じ言語、本質的に優劣はありません。それぞれの外国語を学ぶことには等しく価値があります。私自身、これからもフランス語の学習を続けていきたいと思います。とりあえずの目標は、ハリー・ポッターシリーズを全巻フランス語で読破することです。その後は、前々から個人的に興味のあるフランス現代思想家たちの著作を、フランス語の原文で読み解くためにフランス語の読書力をつけていきたいと考えています。
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広大の学生・教職員の皆さん、ぜひ「昼読」にご参加ください!
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2016年度も月・水・金に「昼読」を行います
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