以下の原稿は、昨年の広島大学英語文化教育学会(注)での発表です。掲載が遅れましたことを藤本先生ならびに関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。
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グラフィック・オーガナイザーを用いた「書くこと」の指導
ー主体的な学びの実現を目指してー
藤本裕佳里
三次市立十日市中学校
(現在は三次市教育委員会指導主事)
1.はじめに
今日の学校教育では,「主体的な学び」が求められている。「書くこと」の学習活動においても,他者との関わりを意識させ,対話的な学びの過程を取り入れて自分の考えなどを深めさせ,主体的に自分の考えなどを表現しようとする生徒を育成することが求められている。本発表では,中学校英語科において,主体的に「書く活動」に取り組み,自分の考えなどを意欲的に表現することができる生徒の育成を目指して,取り組んできた授業実践を報告する。
2.授業実践
中学校2年生を対象に,独自に開発したグラフィック・オーガナイザーを用いて「書くこと」の指導を行った。
①Idea Star
1学期に,「自分の思いや考えを根拠を挙げて書く学習活動」を仕組んだ。生徒にとって初めての学習となる。心理面・言語面・内容面での支援が必要であった。そこで,生徒の関心の高いテーマを設定し,「意見を述べる相手(読み手)」を明確に設定することで,生徒の学習意欲を向上させた。書く内容を考案し,考えを整理するためのツールとして,Idea Star(星型の図)を活用させた。自分の思いや考えを中央に書き,その理由となる文を星の上側の黄色い部分に書き,その周りに具体例を挙げて書くことができるグラフィック・オーガナイザーである。最終的に,生徒同士の交流等を通して,より説得力のある根拠を選択させて,英文を完成させた。
図1 Idea Star
図2 書く意欲向上の工夫
②Idea Diamond
2学期には,内容的にまとまりのある説明文を書く力を高めるために,「将来の夢」について書く学習活動を仕組んだ。中学2年生にとって,自分自身の将来の夢を書くことは認知的負荷が大きい活動である。職場体験学習の事後学習等や進路指導の時期と合わせて授業を実施した。
最初に,将来の夢を述べる際に適した文章構成や適切なつなぎ言葉を理解させるため,また,書く内容を考案する際の手立てとするため,モデル文を分析的に読み取ることが重要であると考え,Idea Diamond(ひし形の図)に当てはめたモデル文を読ませ,各パーツがどんな役割を果たしているのかを考えさせた。また,アイデアを考える手立てとして,二つの理由がそれぞれ異なった視点(①自分自身との関わり,②社会との関わり)から述べられていることに気づかせ,自分がアイデアを考案する際の参考とさせた。モデル文の理由や根拠などのパーツを自分で考えて書く練習の後,自分自身の将来の夢について書かせた。全員が意欲的に書き上げることができた。
図3 Idea Diamond
3.おわりに
生徒達の書いた文章や意識アンケートから,グラフィック・オーガナイザーを用いた「書くこと」の指導には,次の利点があることが分かった。①自分が書く前に,文章構成を分析的に読むことで,内容が理解できる。②書く内容を考案しやすい。③書いた内容を整理しやすい。
しかし,生徒達はいつまでもこれらのツールに頼って書くことはできない。読み手を意識し,伝えたい内容を分かりやすく伝えるためにはどんな文章構成にすべきかを主体的に考えて表現することができる生徒の育成を目指して,今度も授業改善に努めていきたい。
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(注)この広島大学英語文化教育学会は、2018年4月から広島大学英語教育学会となる予定です。これまで別組織であった大学院修了生を中心とする学会と学部卒業生を中心とする学会が統合し、(新しい)広島大学英語教育学会となります。
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