2017/06/29

アクティブ・ラーニングを目指す英語授業改善への取り組み (二川敬伍 広島県立三原高等学校)


今年度の広島大学英語教育学会(これまでの広島大学英語文化教育学会は2018年4月に広島大学英語教育学会と統合予定です)は7月23日(日)に開催されます。また、これまでの広島英語教育学会は7月22日(土)に開催されます。




これら二つの学会の詳細は、後日お知らせするとして、本日、ここに掲載するのは、昨年の広島大学英語文化教育学会で発表をしてくれた二川敬伍先生 (広島県立三原高等学校)の発表要旨です。事務局の手違いで、掲載が大変遅れたことを二川先生ならびに関係の方々にお詫び申し上げます。


広大教英は、独自の学会活動を通じて、(1)卒業生・修了生が自らの教育実践について安心して語り合える場を作り、さらに(2)一般市民にも開放された英語教育について率直に語り合える場を作ります。



今後共に広大教英にご注目ください!(英語教育小論文コンテストは只今審査中です。結果は後日お知らせします。しばらくお待ちください。)







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アクティブ・ラーニングを目指す英語授業改善への取り組み
―教員・生徒の長期的な意識改革から―

二川敬伍 (広島県立三原高等学校)


1.はじめに

  これからの予測不能の社会を生き抜くことのできる人材を育成するため,従来の知識伝達型の授業から,学習者が主体的に問題を発見し解決策を見出す「アクティブ・ラーニング」型授業への質的転換が求められている。広島県立三原高等学校は,広島版「学びの変革」パイロット校事業の指定を受け,各教科の授業を中心に,主体的・協働的な学習のためのカリキュラム開発や指導・評価・検証の方法の研究開発に取り組んでいる。本稿では,生徒達の学びに対する意識を改善する意図で実践した「アクティブ・ラーニング型」授業の成果と課題について報告する。


2.現状と課題

 第2学年のあるクラス(32名)を対象に,4月の最初の授業で行った事前のアンケート調査では,「英語が好き」あるいは「得意」であると述べた生徒が半数以上であった。しかしながら,そのほとんどが「英語を上手に訳せたときや,難しい問題を解けたときに達成感を感じる」と述べたり,「教科書の全訳をしたり,日本語訳を覚えたえりすることが英語の学習である」と答えたりするなど,生徒の英語学習に対する能動性・主体性があまり高くないという課題があることがわかった。


3.課題解決のための取り組み

  以上の課題を解決するための手段として,アクティブ・ラーニング型の授業を実践した。アクティブ・ラーニングには,一方的な講義型の知識伝達ではなく,認知プロセスの外化を伴う活動と,それへの関与があるという特徴がある。また,これを通して,活用できる深い理解や思考の方法,社会性などを身につけることも目的としている。

 本実践では,ペアやグループなど学習形態を工夫し,生徒が主体的に英語学習に取り組めるような工夫をした。具体的には,帯活動として,Word Counterを用いた1min. talkを1学期間継続した。また,本文と関連付けながら,ペアに単語を説明するゲームを通して,語彙や表現の定着を図った。内容理解の活動では,Graphic Organizerやジグソー法を用い,可能な限り日本語を介さずに内容理解ができるよう工夫した。また,本文内容や表現を内在化させるための多様な音読活動や,課題発見・解決活動としてのProblem Mappingの活動などで,ペア学習・グループ学習を積極的に取り入れた。


4.成果と今後の課題

 5月中旬時点のアンケートでは「英語が苦手」と述べた生徒がクラスの半数近くまで上昇した。これは,授業の進め方がこれまでと違ったことや,授業で全訳を扱わなかったことなどに起因すると考えられる。しかし,取り組みを継続した結果,7月中旬時点でのアンケートでは,授業中の「全訳」や「文法全部解説」を求める声は若干減少した。そして,ペアワークやグループワークを中心として,協働的・主体的に学習を進めることに対する肯定的な意見が少しずつ増えるようになった。このことから,生徒の英語学習に対する意識は少しずつ変化し始めたと言えるだろう。

  ただし,依然として文法解説や全訳にこだわる生徒が一定数いることや,活動の目的が明確に伝わっておらず,学習が深まっていない生徒がいること,生徒の英語学力の検証がきちんとできていないことなど,課題は少なくない。今後も,長期的な視点で授業改善と生徒の意識改革に取り組んでいく必要がある。





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