2017/06/30

グラフィック・オーガナイザーを用いた「書くこと」の指導 ー主体的な学びの実現を目指してー (藤本裕佳里)



以下の原稿は、昨年の広島大学英語文化教育学会(注)での発表です。掲載が遅れましたことを藤本先生ならびに関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。



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グラフィック・オーガナイザーを用いた「書くこと」の指導
ー主体的な学びの実現を目指してー


藤本裕佳里
三次市立十日市中学校
(現在は三次市教育委員会指導主事)


1.はじめに

今日の学校教育では,「主体的な学び」が求められている。「書くこと」の学習活動においても,他者との関わりを意識させ,対話的な学びの過程を取り入れて自分の考えなどを深めさせ,主体的に自分の考えなどを表現しようとする生徒を育成することが求められている。本発表では,中学校英語科において,主体的に「書く活動」に取り組み,自分の考えなどを意欲的に表現することができる生徒の育成を目指して,取り組んできた授業実践を報告する。


2.授業実践

  中学校2年生を対象に,独自に開発したグラフィック・オーガナイザーを用いて「書くこと」の指導を行った。

①Idea Star

 1学期に,「自分の思いや考えを根拠を挙げて書く学習活動」を仕組んだ。生徒にとって初めての学習となる。心理面・言語面・内容面での支援が必要であった。そこで,生徒の関心の高いテーマを設定し,「意見を述べる相手(読み手)」を明確に設定することで,生徒の学習意欲を向上させた。書く内容を考案し,考えを整理するためのツールとして,Idea Star(星型の図)を活用させた。自分の思いや考えを中央に書き,その理由となる文を星の上側の黄色い部分に書き,その周りに具体例を挙げて書くことができるグラフィック・オーガナイザーである。最終的に,生徒同士の交流等を通して,より説得力のある根拠を選択させて,英文を完成させた。


  
図1 Idea Star    

図2 書く意欲向上の工夫


②Idea Diamond

2学期には,内容的にまとまりのある説明文を書く力を高めるために,「将来の夢」について書く学習活動を仕組んだ。中学2年生にとって,自分自身の将来の夢を書くことは認知的負荷が大きい活動である。職場体験学習の事後学習等や進路指導の時期と合わせて授業を実施した。

最初に,将来の夢を述べる際に適した文章構成や適切なつなぎ言葉を理解させるため,また,書く内容を考案する際の手立てとするため,モデル文を分析的に読み取ることが重要であると考え,Idea Diamond(ひし形の図)に当てはめたモデル文を読ませ,各パーツがどんな役割を果たしているのかを考えさせた。また,アイデアを考える手立てとして,二つの理由がそれぞれ異なった視点(①自分自身との関わり,②社会との関わり)から述べられていることに気づかせ,自分がアイデアを考案する際の参考とさせた。モデル文の理由や根拠などのパーツを自分で考えて書く練習の後,自分自身の将来の夢について書かせた。全員が意欲的に書き上げることができた。

  図3  Idea Diamond 


3.おわりに

 生徒達の書いた文章や意識アンケートから,グラフィック・オーガナイザーを用いた「書くこと」の指導には,次の利点があることが分かった。①自分が書く前に,文章構成を分析的に読むことで,内容が理解できる。②書く内容を考案しやすい。③書いた内容を整理しやすい。 
  
しかし,生徒達はいつまでもこれらのツールに頼って書くことはできない。読み手を意識し,伝えたい内容を分かりやすく伝えるためにはどんな文章構成にすべきかを主体的に考えて表現することができる生徒の育成を目指して,今度も授業改善に努めていきたい。




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(注)この広島大学英語文化教育学会は、2018年4月から広島大学英語教育学会となる予定です。これまで別組織であった大学院修了生を中心とする学会と学部卒業生を中心とする学会が統合し、(新しい)広島大学英語教育学会となります。







2017/06/29

アクティブ・ラーニングを目指す英語授業改善への取り組み (二川敬伍 広島県立三原高等学校)


今年度の広島大学英語教育学会(これまでの広島大学英語文化教育学会は2018年4月に広島大学英語教育学会と統合予定です)は7月23日(日)に開催されます。また、これまでの広島英語教育学会は7月22日(土)に開催されます。




これら二つの学会の詳細は、後日お知らせするとして、本日、ここに掲載するのは、昨年の広島大学英語文化教育学会で発表をしてくれた二川敬伍先生 (広島県立三原高等学校)の発表要旨です。事務局の手違いで、掲載が大変遅れたことを二川先生ならびに関係の方々にお詫び申し上げます。


広大教英は、独自の学会活動を通じて、(1)卒業生・修了生が自らの教育実践について安心して語り合える場を作り、さらに(2)一般市民にも開放された英語教育について率直に語り合える場を作ります。



今後共に広大教英にご注目ください!(英語教育小論文コンテストは只今審査中です。結果は後日お知らせします。しばらくお待ちください。)







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アクティブ・ラーニングを目指す英語授業改善への取り組み
―教員・生徒の長期的な意識改革から―

二川敬伍 (広島県立三原高等学校)


1.はじめに

  これからの予測不能の社会を生き抜くことのできる人材を育成するため,従来の知識伝達型の授業から,学習者が主体的に問題を発見し解決策を見出す「アクティブ・ラーニング」型授業への質的転換が求められている。広島県立三原高等学校は,広島版「学びの変革」パイロット校事業の指定を受け,各教科の授業を中心に,主体的・協働的な学習のためのカリキュラム開発や指導・評価・検証の方法の研究開発に取り組んでいる。本稿では,生徒達の学びに対する意識を改善する意図で実践した「アクティブ・ラーニング型」授業の成果と課題について報告する。


2.現状と課題

 第2学年のあるクラス(32名)を対象に,4月の最初の授業で行った事前のアンケート調査では,「英語が好き」あるいは「得意」であると述べた生徒が半数以上であった。しかしながら,そのほとんどが「英語を上手に訳せたときや,難しい問題を解けたときに達成感を感じる」と述べたり,「教科書の全訳をしたり,日本語訳を覚えたえりすることが英語の学習である」と答えたりするなど,生徒の英語学習に対する能動性・主体性があまり高くないという課題があることがわかった。


3.課題解決のための取り組み

  以上の課題を解決するための手段として,アクティブ・ラーニング型の授業を実践した。アクティブ・ラーニングには,一方的な講義型の知識伝達ではなく,認知プロセスの外化を伴う活動と,それへの関与があるという特徴がある。また,これを通して,活用できる深い理解や思考の方法,社会性などを身につけることも目的としている。

 本実践では,ペアやグループなど学習形態を工夫し,生徒が主体的に英語学習に取り組めるような工夫をした。具体的には,帯活動として,Word Counterを用いた1min. talkを1学期間継続した。また,本文と関連付けながら,ペアに単語を説明するゲームを通して,語彙や表現の定着を図った。内容理解の活動では,Graphic Organizerやジグソー法を用い,可能な限り日本語を介さずに内容理解ができるよう工夫した。また,本文内容や表現を内在化させるための多様な音読活動や,課題発見・解決活動としてのProblem Mappingの活動などで,ペア学習・グループ学習を積極的に取り入れた。


4.成果と今後の課題

 5月中旬時点のアンケートでは「英語が苦手」と述べた生徒がクラスの半数近くまで上昇した。これは,授業の進め方がこれまでと違ったことや,授業で全訳を扱わなかったことなどに起因すると考えられる。しかし,取り組みを継続した結果,7月中旬時点でのアンケートでは,授業中の「全訳」や「文法全部解説」を求める声は若干減少した。そして,ペアワークやグループワークを中心として,協働的・主体的に学習を進めることに対する肯定的な意見が少しずつ増えるようになった。このことから,生徒の英語学習に対する意識は少しずつ変化し始めたと言えるだろう。

  ただし,依然として文法解説や全訳にこだわる生徒が一定数いることや,活動の目的が明確に伝わっておらず,学習が深まっていない生徒がいること,生徒の英語学力の検証がきちんとできていないことなど,課題は少なくない。今後も,長期的な視点で授業改善と生徒の意識改革に取り組んでいく必要がある。





2017/06/23

英語教育小論文コンテスト応募論文を書きかけの方、少々締切を過ぎてもかまいませんのでどうぞご提出ください!



英語教育小論文コンテストの締切を、郵送でしたら、本日6/23(金曜)の消印有効としておりましたが、さきほど電話がかかって、「本日の消印がもらえそうもないのだが、受け付けてくれるだろうか」という問い合わせを受けました。


私たちの答えは「もちろん受け付けます!」です。





もし、小論文を書いたのだけれど、締切に間に合いそうもないので諦めた方がいらっしゃいましたら、どうぞ最後まで書いて郵送して下さい。

他にもこのような方がいらっしゃるかもしれないので、締切を、郵送でしたら6/26(月)の消印有効、メール送付でしたら6/26(月)の17時までの送付と延長いたします(早々に作品を応募してくださった皆さん、ごめんなさい)。


英語教育に対する皆さんのご関心に心から感謝します。

このコンテストだけでなく、日頃の研究や教育などで、日本の英語教育を良くするために広大教英は全力を尽くしますので、今後共どうぞよろしくお願いします。




10代・20代の皆さん、英語教育を変えるための提言をしてください! 
英語教育小論文コンテストを開催します。
http://hirodaikyoei.blogspot.jp/2017/04/1020.html

英語教育小論文コンテスト(締切6/23)の提出形式について







2017/06/19

なんと小学6年生が英語教育小論文コンテストに応募してくれました!



広大教英主催の英語教育小論文コンテストですが、なんと小学校6年生が約3000字の力作を送ってくれました。




関係者として嬉しくてたまらなかったのでこの記事を書いています。

コンテスト締切は6/23(金)ですが、事務局がメールなどをチェックするのは6/26(月)の朝です(笑) --May the illocutionary force be with you! ←語用論とスターウォーズを知っている人なら意味わかりますよね--

若い世代の素直な気持ちや考えが表現されていれば、どんな原稿でも歓迎です。若い人の声を聞かせてください!



10代・20代の皆さん、英語教育を変えるための提言をしてください! 
英語教育小論文コンテストを開催します。
http://hirodaikyoei.blogspot.jp/2017/04/1020.html

英語教育小論文コンテスト(締切6/23)の提出形式について














2017/06/15

7月21日(金)にアリゾナ大学のD.アトキンソン教授が広大教英で講演



Alternative Approaches to Second Language Acquisition などの著作でも有名なドワイト・アトキンソン教授の講演を以下の要領で行います。参加無料・申込み不要ですので、ぜひお気軽にお越しください!




■ タイトル
Homo Pedagogicus : The Evolutionary Nature of Second Language Teaching

■ 講師
Professor Dwight Atkinson (the University of Arizona)

■ 日時
2017年7月21日(金) 13:10-14:20

■ 場所
広島大学教育学部K207教室

■ 使用言語
英語(必要に応じてQ&Aの際に通訳をする場合もありますが、原則として講演の通訳はしません)。

■ 参加費・事前申込み
ありません。当日、会場に直接お越しください。

■ 講演内容
     Second language teacher educators tirelessly teach others how to teach. But how often do we actually define teaching? Without explicit, focused definitional activity on this fundamental concept in second language teaching (SLT), it remains implicit and intuitive--the opposite of clear, productive understanding.
     I therefore explore the definitional question, "What is teaching?" in this paper. First, I establish the claim that the SLT literature rarely defines teaching explicitly, in part because of its technical "how-to" focus, and that this is a problem. Second, I offer a heuristic definition of teaching as evolutionarily adaptive behavior--as existing in humans because it enables flexible adaptation to extremely varied and complex ecosocial circumstances. In contrast, animals have quite modest adaptive powers, so it may come as a surprise that teaching as evolutionarily adaptive behavior is not uniquely human. Therefore, third, I review research comparing animal and human teaching in order to help us understand the latter better. Fourth, I describe teaching as studied by anthropologists--as it varies across human groups. It turns out that formal teaching is relatively rare when viewed from an anthropological perspective, and relatively recent at that. Fifth and finally, I employ the results of this definitional exercise to examine, in an exploratory way, what happens in SLT classrooms.




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お知らせ

10代・20代の皆さん、
あなたの声をぜひ聞かせてください! 
英語教育小論文コンテストの締切は6/23です。






また、このコンテストの授賞式
最優秀論文に基づく対話の集い
7/23(日)
公開企画として開催します。
ぜひお越しください!








2017/06/14

6/24(土)に広島大学で中国地区英語教育学会が開催されます

※お知らせ(2017/06/19):何らかの技術的な問題のため、プログラムのダウンロードができなかったようですが、本日、ダウンロードできるようにしました。ご迷惑をお詫びします。

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6/24(土)の午後に広島大学教育学部で中国地区英語教育学会が開催されます。

参加費は正会員でしたら無料、当日会員でしたら一般2000円、学部生・大学院生1000円)です。

学会員でない皆さんも、ぜひ参加して、英語教育学研究に触れてみて下さい。

プログラムはこちらからダウンロードできます(2017/06/19更新)。





以下は、広大教英関係者の発表です。


第1室:L102

14:50〜15:20
児童の発音能力に関する実態調査―復唱・音素認識・音声化に焦点を当てて―
阿部聡生(広島大学大学院院生)


第2室: L104

13:40〜14:10
英語科において思考力を育成するための授業 -思考スキルに着目して-
入船弘毅(広島大学大学院生)

14:15〜14:45
Journal Writing May Not Always Help: A Case of a Novice Teacher
中川 篤(広島大学大学院生)

14:50〜15:20
優れた英語教師教育者における感受性の働き―情動共鳴によるコミュニケーションの自己生成―
柳瀬陽介(広島大学)

16:00〜16:30
日本人英語学習者による不平発話行為に対する適切性判断の分析
梅木璃子(広島大学大学院生)


第4室:L109

15:25〜15:55
自由英作文の評価から見られる英語科教員志望大学生のライティングに関するビリーフ
坂本航星(広島大学大学院生)

16:00〜16:30
英語集中講座における短期大学生のライティング意識の変容に関する事例研究
仲川浩世(広島大学大学院生)


第5室:L206

14:50〜15:20
英語学習における児童・生徒のつまずきと教師の支援の在り方への考察
大谷みどり(島根大学) 飯島睦美(群馬大学)築道和明(広島大学)

15:25〜15:55
英語学習における生徒のつまずきと教師の支援の在り方への考察
飯島睦美(群馬大学)大谷みどり(島根大学)築道和明(広島大学)

16:00〜16:30
大学生の英語学習におけるつまずきの研究:インタビュー調査に基づく事例研究
辰己明子(広島修道大学) 兼重昇(広島大学)




この学会に関する連絡先 
第48回中国地区英語教育学会広島大会事務局
〒739-8524 東広島市鏡山1丁目1番1号
広島大学教育学部 兼 重 昇 研究室内
TEL & FAX: 082-424-6793 
E-mail: kanesige@hiroshima-u.ac.jp





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お知らせ

10代・20代の皆さん、
あなたの声をぜひ聞かせてください! 
英語教育小論文コンテストの締切は6/23です。






また、このコンテストの授賞式
最優秀論文に基づく対話の集い
7/23(日)
公開企画として開催します。
ぜひお越しください!









2017/06/01

教英にはこんな調査装置もあります!


これはアイトラッカーという調査装置です。PCモニターに取り付けて使います。




この装置を使うと、リーディングの最中の目(眼球)の動きを調べることができます。ですので、例えば、英語のリーディング能力が高い人と低い人でリーディング方法はどのように異なるのか、リーディングの目的やタスクによって読み方はどのように変わるのか、学習者は英語教科書の挿絵と本文をどのように関係づけているのか、といったことを調べることができます。こういった調査の結果は、リーディングの指導法や教材開発などに活用することができます。

私個人は、この装置を使って、英語文学作品のリーディング方法が論説文のリーディング方法とどう異なるのか、英語力の高い人と低い人で英語文学作品のリーディング方法が異なるのか、といったことを調査しています。これらの調査結果を活用して、英語文学作品の指導法を開発したいと考えています。

本講座のスタッフは、様々なアプローチで英語教育について研究しています。皆さんも本講座で英語教育について一緒に研究しませんか。





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光脳機能イメージング装置と視線計測装置のセミナーとデモンストレーションを行いました




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お知らせ

10代・20代の皆さん、
英語教育を変えるための提言をしてください! 
英語教育小論文コンテストを開催します。
締切は6/23です。






また、このコンテストの授賞式
最優秀論文に基づく対話の集い
7/23(日)
公開企画として開催します。
ぜひお越しください!













卒業論文中間発表会を開催しました!

すっかり時間が経ってしまいましたが、先月 4 年生の 卒業論文中間発表会を開催しました。今年度もみんなが独創的な研究に取り組んでいます。中間発表会には 3 年生も参加しました。質疑応答は基本的に学生同士が行いました。大変、有意義な時間となりました。   【管理人のゼミ生の...