翻訳は、最近では悪者にされがちですが、英文を深く読み取り、その内容を英語を知らない日本人読者にどう表現したらわかってもらうかを考えるなかで英語を深く読み直す翻訳という営みは、英語と日本語の両方につながる優れた言語学習・言語使用です(このように創造的な「翻訳」は、機械的な「英文和訳」とは全く異なります)。
今回の課題はクラーク博士の有名な一節です。
皆さんでしたらどう翻訳しますか?この一節は、クラーク博士が北海道を離れる際に、学生たちに駅のホームで述べたことばだそうです。もしクラーク博士に達意の日本語が使えたのだとしたら、博士はどう言ったでしょう?
まずは皆さんで、考えてもらえますか?
Boys, be ambitious, not for money, not for selfish accomplishment, not for that evanescent thing which men call fame. Be ambitious for attainment of all that a man ought to be.
以下は、学生さんと小野先生の翻訳です(おまけに当日は参加できなかった管理人(柳瀬)も加えてみました)。中には「ここまで大胆に訳してしまっていいの?」というのもあるかもしれませんが、学生さんは全員英文の正確な意味は十分に理解した上で、敢えて実験的に以下のように訳してみたそうです。
翻訳を通じて英語と日本語の両方を往復しながら言語について考える営みを皆さんもしばしお楽しみください。
A
よく聞きたまえ。お金儲けとか,一人よがりな成功,奴らが名声と呼ぶものなど,風が吹けば飛んでいってしまうぞ。一人の男として為すべきことは何か。一つの妥協も許してはならぬぞ。若人よ,大志を抱くのだ。
B
諸君,自分を愛するために行動したり,富,凡人の言うところの名声という不安定なものに固執してはいけない。人としてどうであるか,どうであったかを考えなさい。
C
諸君,希望を持ち続けよ。富を得るためではない。自分だけが満足するような功績のためではない。まして名声などという儚いものを得るためでもない。(もう一度言おう。)諸君,希望を持ち続けよ。人間が追い求めるべき,あるいは追い求めなくてはならない理想を達成するために,諸君は希望を持ち続けなくてはならないのだ。
D
少年よ,大志を抱け。金や自己の立身出世,うたかたの世評のような目前の目標にとらわれることなく,人としてあるべき姿を追い求めるという高尚な目的のために生きろ。
E
己のために意味を成すものではなく,死に価値を見出される生き方を探求しなさい。
F
若者の皆さん,夢を持ってください。でも,金や,私利私欲や,はかない名声のための夢ではありません。人が人としてあるべき姿を貫くための夢です。
G
学生の皆さん、大きく求めてください。といっても金や我欲ではありません。名声ですらありません。それは消え行くものだからです。皆さんは、人としてあるべき人生を大きく求めてください。
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