2018/01/31

外務省支援のプログラムで東ティモールに行った学部3年生の手記


以下は、外務省支援のプログラムで東ティモールに行った学部3年生のAさんの手記です。約10日間に過ぎませんが、確実に彼女の世界は広がり色彩も豊かになったと思います。若い皆さん、(いや管理人のような中高年の人間も)どんどん世界を広げて柔軟な心をもてるようにしましょう!






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東ティモールで教わった大切なこと


私は、昨年の11月に対日理解促進プログラムという外務省が支援するプログラムに参加し、約10日間東ティモールへ行ってきました。今私の記事を読んでくださっている方の中には、東ティモールと聞いて「どこ? アフリカ? 紛争で危なくないの?」といった疑問が浮かんでいる方も多いと思います。だからこそ、こういった場で私が実際に現地で経験したことや感じたことを共有し、東ティモールについて少しでも多くの方に知っていただけることを大変嬉しく思います。

まず本題に移る前に、東ティモールの情報と東ティモールに行くまでの経緯を簡単に書きたいと思います。東ティモールは、地図でいうとインドネシアとオーストラリアの間に位置する国で、面積は岩手県とほぼ同じくらいの大変小さな国です。また、2012年に独立したばかりのアジアで一番若い国でもあります。「独立したばかりの国へ行って危なくないの?!」と何人もの友人が心配してくれましたが、私たちが滞在した首都ディリは至って平和で、10日間の間に身に危険を感じたことは一度もありません。南国特有のゆったりとした雰囲気で、きちんと気を付けてさえいれば、現在のヨーロッパよりも治安がいいのでは、と感じてしまうほどです。

東ティモール渡航へ至った経緯は、対日理解促進プログラムが提供する派遣国の中で、旅行では行けない国、かつ未知な国を選ぼうといった不純な動機がきっかけです(笑)。なので、私自身も渡航が決定する前まで正直東ティモールがどこに位置しているかも無知でしたし、人生で東ティモールへ行くことになるなんて思ってもいませんでした。しかし、知らなかった国、未知の世界だったからこそ10日間という短い滞在期間の間にここには書ききれないほど多くのことを感じ、日本ではできない体験、出会いに恵まれることができました。

その中でも、私の中で特に印象に残っているエピソードを共有させていただこうと思います。

プログラム中、東ティモール唯一の国立大学にて現地の学生とディスカッションをする機会がありました。その中で学生に聞かれた質問の多くは、日本の学校の環境についてでした。「授業中に発表する機会はあるのか」、「教室にプロジェクターはあるのか」といった私たち日本人からすると当たり前すぎて質問しようとも思わない事柄ですが、そういった質問を受けるたびに、私は「ここには日本の当たり前が存在しない、もし存在するとすれば極めて贅沢なことなのだ」と徐々に感じるようになりました。

何かと日本の教育は国内で批判されがちで、私自身もついつい悪いところばかりに目が向き、与えられた環境に感謝するということを完全に忘れていました。私たちは机やいすの整備はもちろん、寒すぎる・暑すぎるくらい冷暖房が効いた環境が提供されているのにも関わらず、授業中は変な恥ずかしさや周りの雰囲気に流され、どうも自分の意見を言えない、時には居心地が良すぎて居眠りをするなんて、あまりにも恵まれすぎなうえ、与えられた環境を無駄にしていると感じました。

日本の義務教育の教科書無料配布についてディスカッションのグループのメンバーに話した後のあの学生の驚きの表情と反応は忘れられません。東ティモールでは、まだまだ学べる人が限られており、国立大学でさえ、気温30度を超える中冷房無しで学生が熱心に授業を受けています。また、キャンパス見学中に目を輝かせながら話しかけてくれた日本語を勉強中の学生、私たちのプレゼンテーションをメモを取りながら興味深い様子で聴いてくれた姿、助産師になる夢を語ってくれて仲良くなった学生(写真)のことを思い出すと、私も彼らのエネルギッシュな姿勢に負けてられないと奮起させられるとともに、与えられた環境を無駄にしてはいられないという風に思うようになりました。

また、東ティモールの人たちは人とのつながり、特に友達や家族、近所との繋がりをとても大切にしている印象を受けました。実際に、ホームビジットの際に受け入れてくれた一家も週に一度親戚で集まり、ご飯を食べたり、何か起きたときにはすぐに助け合うみたいです。

こういった温かみのある人とのつながりも、多くの日本人が忘れかけている幸せではないでしょうか。

このように、熱い思いを持つ若者や人の温かさに触れて、何か自分の中で忘れていた大切なものが甦ったような気がしました。

たしかに東ティモールの空港から大学に至るまで、全てのものがまだ開発途中という感じはありますが、私は東ティモールで出会った人に対してかわいそうだと思ったことは一度もありません。なぜなら、子供たちや同世代の学生の目がいつも輝いていて、皆が与えられた環境の中で、より良くしていこうと、協力して国を作っているのが身に染みて感じられたからです。日本を含む外国政府が支援する建設途中の橋やキャンパス、ごく一部の人しか買うことができないであろう高価な大量の輸入食品を見て、一つの国として成立し、自国民で国を営んでいくことの難しさ・壮大さも肌で感じました。

5年後、10年後にまた東ティモールを訪れたいと考えています。今後どんな発展を遂げるのかが非常に楽しみです。ですが、あの手つかずの美しいビーチと人々の温かさ、キラキラした熱い若者の姿はどんなに経済発展を遂げても変わらないでほしいと願うばかりです。私自身も何か切羽詰まったり、独りよがりになりそうな時こそこの経験を思い出し、人とのつながりと思いやりを忘れず、与えられた環境を最大限に活かそうとする、向上心のある人であり続けたいと思います。



追記:
2/2(金) 18:30~19:30に、広島大学の学生プラザにて東ティモール及びタイの報告会を行います。
名物東ティモールコーヒーも試飲いただけるので、興味のある方はぜひいらしてください!







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