2018/04/16

『トップジャーナル395編の「型」で書く医学英語論文』を共著出版した石井達也さん(博士課程後期)に寄稿してもらいました。


 教英院生(博士課程後期)の石井達也さんがこの度、本学の河本健教授と羊土社から『トップジャーナル395編の「型」で書く医学英語論文〜言語学的Move分析が明かした執筆の武器になるパターンと頻出表現』を共著で出版しました。

 以下は、その石井さんに寄稿してもらった文章です。石井さんに見習い、教英の他のメンバーも積極的に研究の機会を求め続けたいと思います。石井さん、忙しい中の寄稿をありがとうございました!



 


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  この度、広島大学ライテイングセンター河本健教授と共著で『トップジャーナル395編の「型」で書く医学英語論文〜言語学的Move分析が明かした執筆の武器になるパターンと頻出表現』を2018年3月28日に羊土社から出版しました教英・博士課程後期院生の石井達也と申します。出版に至った経緯とぼんやり考えていることを少し書かせて頂きたいと思います。

 他大学の文学部英文学科を卒業後、英語教師を目指して、2014年広島大学大学院修士課程に入学させていただきました。学部時代はHallidayの提唱する選択体系機能言語学を学んでいました。その関係でコーパスに興味があり、せっかくだったらと思い、修士課程開始半年後に休学し、コーパス言語学のメッカとも言える英国バーミンガム大学大学院の応用コーパス言語学コースに入学しました。広大は大変制度が整っているのでグリーン・ウィング教育奨学金を頂くことができ、英国では勉学に集中した日々を送ることができました。

 修士論文では、自分で医学英語論文をmoveごとに編集したコーパスを作り、分析をしました。moveとは平たく言えば「論の流れ」のことです。医学論文は先行研究によるとIntroduction、Methods、Results、Discussionから成り立っていることが多いのですが、更に細かく見ればそれぞれ3つ、4つ、2つ、3つの計12つのmoveに分けることが出来ます。この考えに基づき4誌395編の医学英語論文を12のmoveに分けた約130万語のコーパスを作成し、分析をしました。

 出版に至ることが出来たのは広大帰国後です。帰国後、教英の院生としての生活を再開しつつ、広大ライティングセンターで働かせて頂き始めました。その時に出会ったのがライフサイエンス分野の英語に関する数々のご著書がある河本教授でした。先生に修士論文を読んでいただき、新たな共同研究を提案させていただきました。同時に、半分冗談で「本にしませんか」とも提案しました。長年膨大なライフサイエンス系の論文抄録コーパスを解析してこられた先生の直感と私の分析とが一致したようで、少しずつ新たな研究の形が作られてきました。河本先生にはさらに、ライフサイエンス辞書コーパスと比較しつつデータを見直して頂き、出版社との交渉もしていただきました。

 ここで私にとって大切なことはコーパスデータで明らかになったことと長年論文を読んでこられた先生との直感が一致したことです。コーパス研究が盛んになりつつある中、長年の経験から導き出される直感がとても大切なのだということを強く再認識しました。このように広大の制度を利用した留学・広大でのご縁が本書の出版を可能にしました。これからもご縁を大切に1歩1歩成長できていければと思います。

 最後にぼんやりと考えていることを書いて終りたいと思います。僕自身、中高時代は勉強が“できる”ようになることを目標にしていたと思います。でも“できる”ようになるとはどういうことでしょうか。偏差値があがることでしょうか。確かにそれもあるかもしれません。でもぼんやり考えているのは、“できる”ようになるとは、「分からないこと」が増えていくことかもしれないということです。

 僕自身研究をするにつれて分からなくなります。ある日は分かったつもりになっても、次の日の朝に矛盾をみつけ、また分からなくなります。その繰り返しです。特に教英伝統の特研・講究では他者に発表を聞いてもらい、質疑をするので、矛盾にすぐに気づくことができます。この矛盾から生じる「分からない」という感情は、「知りたい」という感情になり、本を読むというサイクルになります。

 この感覚は現在中高教員として働かせて頂いていますが、とても大事ではないかと思っています。目の前の中学生・高校生が「分からない」と言った時、それはもしかしたら“できる”ようになる途中と思えるからです。「あ、駄目だ」と思って切り捨てることは簡単ですが、生徒の成長の機会と捉えることがきるのではと思います。僕自身、たくさん分からないことがあります。その結果、博士課程後期まで進学しました。多くの先生方、特に温かみをもって見守って下さる教英の先生方に改めてお礼を申し上げたいと思います。これからもご指導・ご鞭撻をよろしくお願いいたします。


追記(2018/04/17)
文章を一部修正しました。




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