広島大学教育学部英語教育学講座主催・英語教育小論文コンテスト「10代・20代が創る未来の英語教育」のU-19賞・U-29賞・審査員特別賞の受賞者を発表いたします。お名前は受賞者の方々がご了承してくださった形で表記しております。
受賞者の皆様、おめでとうございます。後日、賞状と賞品(図書カード)を郵送させていただきます。
なお、最優秀賞については明日発表する予定です。
U-19優秀賞作品(福田樹さん・大分県)
友人やクラスメイトに比べて英語に劣等感を持っていた筆者は、外国人留学生と話す機会を持ったとき、得意であるはずの人たちが簡単な質疑応答もできなかったのに対し、自分はコミュニケーションに自信があったことから、「英語の力」とは何だろうと疑問を抱きます。そして変革の中にある英語教育が世界で活躍する日本人の育成ばかりをめざして、現実の学習者を視野にいれていないと断じ、学習者の視点からの2つの斬新な英語テスト改革を提案します。グローバル化という流行に敢えて疑問を呈し、不易ながら本質的な問いかけをする姿勢は新鮮であり、U-19優秀賞に値すると判断しました。
U-29優秀賞作品(出口確さん・大阪府)
少なからぬ高校生が、英文を和訳する際、丸暗記した意味をあてはめてしまっているかもしれません。そのような悪しき状況に一石を投じようとしているのが本論文です。本論文は次のように指摘します。「語のニュアンスや、語のネットワークといった、母語話者のもつ言葉についての知識を獲得する必要がある」と。語彙指導の在り方について、さらには言語と思考の深い結びつきについて改めて考えさせる良論文であり、U-29賞に値すると判断しました。
審査員特別賞(志賀良平さん・広島県)
志賀さんは、現在の英語教育改革の中でも、平成32年度前面実施の、小学校高学年の外国語の科目化、中学年の外国語活動の導入がもっとも大きな変化と考え、小学校英語教育について論じます。踏まえておかねばならないのは、小学校教師の多くが英語に苦手意識をもっており、たとえ国が教材を提供しても、教材研究には多くの労力と時間が必要となるだろうということです。そこで、志賀さんが訴えるのは、(中学校も含む)学校現場の労働環境の改善です。過労死ラインに達する勤務時間をもつ教師さえ少なくない中、英語教育改革の成功のためには、教師の労働条件を改善することが急務だと志賀さんは論じます。さらに、地域の同学区内の小学校と中学校の連携も不可欠だとも志賀さんは説きます。英語教育を支える基礎的な条件の整備の必要性を訴えるこの論文は、審査員特別賞にふさわしい優れたものであると判断しました。
審査員特別賞(下村梨乃さん・大阪府)
英語でコミュニケーションをとれるという理想のためにがむしゃらに英語教育に力を入れてしまいがちですが、その根底にある国語に目を向けてみてほしい、と下村さんは訴えます。例えば “identity” といった英単語をそのまま「アイデンティティ」とカタカナ表記したり、「自己同一性」と辞書の訳語をそのまま述べるだけに終わり、文脈に応じて「自分らしさ」や「個性」と翻訳できない学習者、つまりは日本語を十分に使いこなせていない学習者は、英語も理解していないのかもしれません。国語と英語を関連付けて学ぶことは、英語でコミュニケーションをとるという目標のためにも有効であると説得するこの論文の意義は現状では大きいと考え、審査員特別賞にふさわしいと判断しました。
審査員特別賞(丸山知沙さん・愛知県)
丸山さんの訴えは痛烈です。日本の教育改革は、「子どものためといいながら本当は勝手な大人たちのエゴなのでは?」、「勉強ができない子とできる子の間の格差をなくすためではなく、むしろ学力の格差を増やす政策ばかりなのでは?」と丸山さんは問いかけます。また、「文武両道」で「教育熱心」と言われる地域での自分の中学校生活を振り返り、丸山さんは大量の勉強や長時間の部活を要求されて疲れ果てた自分たちが、いつのまにか「どうすれば先生からいい評価がもらえるか」と、教師の顔色ばかりうかがうようになっていたと述懐します。結論として、教育政策の議論よりも必要なことは「もっと生徒たちを信じること」と喝破する丸山さんの論文には、審査員特別賞を与えるべきと判断しました。
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佳作受賞者と作品講評はこちらをごらんください
http://hirodaikyoei.blogspot.jp/2017/07/blog-post_19.html
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7/23(日)の午後は楽しく意味深い語り合いの時間を持ちたいと思います。
ぜひご参加下さい!
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