今回も小野章先生から、「翻訳遊び」について寄稿してもらいました。例によって管理人も拙訳を追加しました。皆さんも翻訳をお楽しみください。
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今回(平成29年1月19日)は,岩波文庫から出ている『アメリカ名詩選』(亀井俊介・川本皓嗣編)中の(歌)詩の翻訳です。なお,同詩選には次のような簡単な紹介が載っています。
「作曲リチャード・ロジャーズ,作詞ローレンツ・ハートという名コンビが1938年に作ったミュージカルの傑作,The Boys from Syracuseからの歌。のちジャズやポピュラーのスタンダード・ナンバーになった。」
Falling
in Love with Love
Falling in love with love is falling for
make-believe.
Falling in love with love is playing the
fool.
Caring too much is such a juvenile fancy.
Learning to trust is just for children in
school.
I fell in love with love one night
When the moon was full.
I was unwise, with eyes
Unable to see.
I fell in love with love,
With love everlasting.
But love fell out with me.
恋をした (翻訳者M)
恋に恋をする。それはもの思いにふけること。
恋に恋をする。それは愚かな行為だ。
依存なんて子どもじみたもの。
人の愛し方だって子どもですらわかるのに。
月が満ちた日
あやまちをおかした。
思慮に欠け恋に溺れた。
恋に恋をした。
一生終わることのない時間のはずだった。
残るのは虚しさだけだった。
恋をする (翻訳者T)
恋をする。だまし,だまされ,それでもふたり
恋をして。あなたとわたし“変”かもしれない。
気にかける。時にやりすぎ,こどものように。
疑わず。大人になればむずかしい。
ひときわきれいなあの夜に
わたしはあなたに恋をした。
どうしてあなたに,なぜわたし。
答えは2人もわからない。
恋をした。明日2人はふたりきり。
なぜあなた。そんな期待を裏切るの。
僕は名俳優 (翻訳者K)
愛しい人と恋をしても周りが羨ましがるだけ。
恋なんてものはいわば二人で作る舞台。
悩んで苦しみもがくような恋は,そうだったら良いなっていうみんなの夢。
信じることを覚えても,だまされて終わりさ。
光でいっぱいの夜,ぼくは自分すら完璧にあざむいた。
見えないふりをして,精一杯の演技をした。
どうやらぼくも本当の馬鹿だったみたいだ。
恋に恋して (翻訳者N)
恋に恋するとは,みかけにだまされること。
恋に恋するとは,道化を演じること。
恋人を気づかいすぎるのは,若者が抱く幻想のようなもの。
誰かを信じるようになるのは,それこそ無邪気な学童のすること。
それなのにあの晩,私はあなたに恋した。
満月のあの夜に。
目がどうかしていたのね。
よく見えなかったの,月が明るすぎて。
私はあなたに恋をした。
永遠に続く恋だと思ったのよ。
でも,あなたとは仲違いすることになってしまった。
愛と恋の考えの違い (翻訳者H)
恋に傾倒するなんてまるで幻想に夢中になるようなはかないもの。
恋に傾倒するなんてまるで道化を演じるようなむなしいもの。
恋にのまれ,見えなくなった恋に気をもむなんて,まるで子どもの絵空事。
人を信じるなんてこと子どもが学校で学ぶことだ。
満月の夜に私はその人を愛したんだ。
青二才な私には何もみえてなどいなかったけれど。
私はその人を愛していたんだ。
とわに続く愛に。
だけど愛は私から去っていったんだ。
恋に恋して (翻訳者O)
恋に恋するのは落ちるふりをするようなもの。
恋に恋するのは一人芝居を打つようなもの。
好きになり過ぎるのは単なる若気の思い込み。
信じようとするのは学童くらいなもの。
僕はある夜恋に恋した
それは満月の夜だった。
愚かにも,目を開いたまま僕には
何も見えていなかった。
僕は恋に恋した,
永遠の恋に。
でも恋の方が僕に愛想を尽かしてしまった。
愛を信じてみたかった (翻訳者Y)
愛を信じてみたかった
愚かに信じてみたかった
少女みたいに恋をして
子どもみたいに甘えたかった
あの夜、愛を信じたの
だって満月だったのよ
でも何も見えていない
私は愚かな一人の女
私は愛を信じたかった
いつまでも続く愛
でもそんな愛なんて
こんな感じで翻訳で遊んでいます
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